日本を動かすエリートたちの街、東京・霞が関から、官僚の人事情報をいち早くお届けする名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。月刊「文藝春秋」2023年3月号より一部を公開します。
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木原官房副長官の“ネーミング”は吉と出るか?
霞が関を騒がせてきた防衛費増額問題が一段落したと思いきや、財務省に「異次元の少子化対策」という難問が飛んできた。
1月4日の年頭記者会見で、岸田文雄首相自らぶち上げたものだが、アベノミクスの「異次元の金融緩和」にならったネーミングの考案者は木原誠二官房副長官(平成5年、旧大蔵省入省)。守勢に立たざるを得ない国会論戦、4月の統一地方選を睨んだ秘策だった。
「異次元」といえば、かつてない新機軸の施策、または関連予算の大幅増を想起させるが、今回、茶谷栄治事務次官(昭和61年)はじめ財務省は寝耳に水だった。財務省出身の宇波弘貴首相秘書官(平成元年)は官邸との板挟みとなり弱り切っている。
さらに事態を深刻化させたのが自民党の政治家だった。
甘利明前幹事長は「児童手当は財源論に繋げなければならない」「消費税も含め、地に足をつけた議論をしなければならない」と財源論に言及。この発言は「すわまた増税か」と物議をかもした。
さらに菅義偉前首相が拙速な増税論を批判したことで、「異次元の少子化対策」は、防衛費問題と同様、財源問題が先行することとなった。
財務省では新川浩嗣主計局長(昭和62年)の指揮の下、厚生労働担当の大沢元一主計官(平成7年)が、少子化対策を担う。将来を嘱望される一人だが、「異次元」の名称に見合う少子化対策を作り上げられるのか。「失敗に終わったとき財務省の失点にされては、堪ったものではない」と財務省から早くも官邸への怨嗟の声が漏れる。