2013年3月の就任以来、2年で物価上昇率2.0%実現の目標を掲げ、「異次元緩和」を続けてきた黒田東彦日銀総裁。その背景には、就任直前に第二次安倍政権と日銀との間で取り決められた「共同声明」の存在がある。
デフレからの早期脱却と物価安定下での持続的な経済成長を目指したアベノミクスを実現するため、政府と日銀が果たすべき役割が明記された共同声明だが、 来たる日銀総裁人事を前にその見直しをすべきか否か、議論が活発化している。
令和国民会議(通称:令和臨調)運営幹事を務める平野信行氏(三菱UFJ銀行特別顧問)と翁百合氏((株)日本総合研究所理事長)は、『文藝春秋』3月号に寄稿し、「新たな共同声明」作成の必要性を説きつつ、民間企業の責任を指摘した。
日銀の「独り相撲」で2%は無理
積年の構造改革課題の解決に向け、経済界・労働界・学識者などの有志で発足した令和臨調の共同座長も務める二人は、共同声明の意図には賛同しつつ、異次元緩和についてはこう評価する。
〈この10年というスパンで振り返ってみると、2年という短期間で2.0%の物価上昇率を達成することはそもそも難しかったと思われます。政府は、経済の競争力と成長力の強化、持続的な財政構造の確立を掲げましたが、現在に至るまで実現できていません。安定的な物価上昇は、日銀が独り相撲で達成できるものではないのです〉
一方で、民間企業の問題を無視することはできないという。2012年から16年まで三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)の頭取を務めた平野氏は「自戒しつつ」と述べながら、その問題点を指摘する。