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「近くで見れば見るほど好きになる」元ベースボールメイツが語る、深すぎるドラゴンズ愛

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/06/15
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平田、大島、直倫、松坂、荒木……ベースボールメイツが間近で見た選手の素顔

 平田良介さんはナゴヤドームでサイクルヒットを記録したとき、花束を渡すことができました。ドラゴンズファンの歓声だけでなく、ビジターのファンからも温かい拍手があって、平田さんの目が潤んでいたような気がします。私もちょっともらい泣きしそうになりました。忘れられない瞬間になりましたね。

 2000本安打までもう少しの大島洋平選手は「クール」というイメージがあるかもしれませんが、私はちょっと違うんです。誰よりも早くグラウンドに来て、バッティングの練習をしていたのがとても印象的で、プレーに対して「熱い」方なんだと感じていました。当時は試合前にスピードボールコンテストがあって、そのときも挑戦者の方の投球にあわせて大島さんはタイミングを取る練習をしていました。誰よりも努力をしているからこそ、これだけ長く結果を残し続けているんだと思います。

 あとはやっぱり浅尾拓也さん! 浅尾さんはお人柄も素晴らしいんです。引退セレモニーのとき、メイツが回収し忘れてしまったものがあったのですが、それを浅尾さんが「すみません、これも持っていってもらっていいですか?」と持ってきてくださって。あのスーパースターがわざわざ腰を屈めて優しく言ってくれたんですよ。みんなで「なんて素敵な方なんだろう」と話しましたね。

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 お人柄が素敵な方といえば、堂上直倫さん。あるとき、私たちがいる通路に直倫さんがいらっしゃって、直倫さんから「すみません、ここで見させていただいていいですか?」と言われました。選手はグラウンドの主役ですから「どうぞ、どうぞ!」という感じでしたが、誰に対しても本当に丁寧で人間性が素晴らしい方なんだと感激しました。

 松坂大輔さんも忘れられません。あれだけの選手ですが、チームに溶け込もうとされているのを感じましたし、松坂さんが投げているときは「松坂さんに勝ちをつけたい」というチームの一体感をより一層感じましたね。とても気さくな方で、ヒーローインタビューでサインボール用のボールを渡しに行ったときも笑顔で優しく対応してくださりました。

 今でも繰り返し見るのが、荒木雅博さんが2017年8月29日に見せてくれた「神走塁」。子どもの頃から応援していた荒木さんが、私たちのいる通路まで飛んでくるんじゃないかという勢いで、ヘッドスライディングで飛んできたんです! 荒木さんだからこそ成し得たことだと思いますし、人生でこんなに鳥肌が立つことってあるんだ……という感じでした。一生忘れられない光景です。

 ドアラさんは、とにかくずっとお茶目! 私たちが通路から審判さんを見ているとき、いつの間にかドアラさんが隣に来て、私たちの真似をしていました。気配を感じて振り向くと「何もしてないよ~」ととぼけてみせたり。ドアラさんはどんなときでもずっとドアラさん。たまに疲れて椅子に座っていることもありましたが……(笑)。

©廣岡まりあ

プロ野球は裏方さんの支えがあってこそ

 メイツをしていると裏方さんと接することがたくさんあります。用具係の方、ブルペンキャッチャーの方……。用具係の平沼さんは、私たちが折れたバットを回収に行くと、「新しいのを用意しておくね」と声をかけてくださり、迅速に対応してくれました。プロ野球は華やかに見えますが、いつもみなさんが後ろで支えてくださっているから成り立っているんだな、と強く実感しました。メイツとして自分も裏方で働いた経験が、野球の見方を変えてくれたと思います。

 私がメイツをしていた時期は、チームの成績がなかなか上向きにならなくて、連敗が続くこともありました。でも、ベンチからはいつも味方を鼓舞する大きな声が出ていて、「ドラゴンズは暗い」と言われることがあるようですが、私は一度も感じたことがなかったです。

 今でもバンテリンドームに行くと、ラジオを片耳につけて解説を聴きながら、三塁側から双眼鏡でベンチを見るのが好きです。ブライト健太選手が大声を張り上げているのが印象的ですし、小笠原慎之介投手をはじめとする先発投手がマウンドから下りた後もベンチで声を出している姿に胸を打たれます。好投していても勝ちがつかない、そんな試合はベンチで見守る先発投手の姿に「勝利してほしかった」ともどかしく感じてしまうし、同時に野球の難しさも感じます。しかし「自分に勝ちが付かなくてもチームが勝てたら喜ぶ」選手の嬉しそうな顔がチームのいい雰囲気を感じ、また胸を熱くさせます。

 まだまだ伝えきれていないベースボールメイツから見たドラゴンズの魅力がたくさんあるので、また皆さんにお話しできる機会があると嬉しいです!

©廣岡まりあ

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