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山はおそろしい

「道がわからなくなった」登山中の40代男性が遭難、3ヶ月後に“白骨化遺体”で発見…知っておきたい“山の死亡事故リスク”と安全知識

「道がわからなくなった」登山中の40代男性が遭難、3ヶ月後に“白骨化遺体”で発見…知っておきたい“山の死亡事故リスク”と安全知識

『これで死ぬ アウトドアに行く前に知っておきたい危険の事例集』より #1

2023/08/12
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知っておきたい安全知識(4)落雷

 雷は高いものに落ちる性質があり、山頂、尾根、立木など、山には雷が落ちやすいものがあちこちにある。唯一、安全なのは山小屋なので、山で雷に遭遇したら、急いで最寄りの山小屋に逃げ込むのがいちばんだ。避難するときはできるだけ姿勢を低くして移動する。雨が降っていても傘をさしてはならない。近くに山小屋がなければ、谷筋や窪地、山の中腹などに逃げ込んで、できるだけ姿勢を低く保って雷が去るのを待つしかない。

 心情的には大きな木の下に避難したくなるが、木に落ちた雷が人に飛び移ってくる「側撃」が起こる可能性があり、かえって危険。ただし、下のイラストで示した保護範囲内にいれば、比較的安全だとされている。

知っておきたい安全知識(5)熱中症の応急手当

 大量の発汗、めまい、筋肉のこむら返りなどの症状が表れたら、とにかく体を冷やして体温の上昇を抑えること。左のイラストのように仰向けの体勢にして休ませたら、太い血管が皮膚に近い場所を通っている首筋、脇の下、股の付け根に、冷たい水を入れたペットボトルや、濡れタオルなどを当てて冷やす。扇子などであおいで風を送るのもいい。発汗によって失われた水分と塩分も充分に補給しよう。

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知っておきたい安全知識(6)低体温症の応急手当

 低体温症の予防・対処の4原則は、「隔離」「保温」 「加温」「カロリー摂取」。寒さや風雨を遮ることのできる山小屋などに避難したら、濡れたウェアを着替え、防寒具やレスキューシート、シュラフなどで体を保温する。さらにお湯を入れた耐熱性の容器を胸などに当てがって加温するとともに、高カロリーの温かい飲み物を飲む。体表部の冷たい血液を体の深部に送り込んでしまうマッサージはNG。

知っておきたい安全知識(7)高山病の応急手当

 国内の山で発症する高山病は、比較的軽症の急性高山病がほとんどだが、それが重篤化して、命に関わる高地肺水腫や高地脳浮腫に進行することも稀にある。高山病のいちばんの特効薬は、高度を下げること。頭痛や吐き気などの症状が出たときに、しっかりした深呼吸をしばらく続けても改善されないなら、速やかに下山する判断を。自力下山が無理なら救助を要請するしかない。(#2に続く)

「道がわからなくなった」登山中の40代男性が遭難、3ヶ月後に“白骨化遺体”で発見…知っておきたい“山の死亡事故リスク”と安全知識

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