いつの時代でも、アウトドアで行うスポーツやレジャーは、老若男女を問わず多くの人たちに親しまれている。しかし、その一方で、野山での遭難事故や、川・海での水難事故が後を絶たない。そのような不幸な事故を減らすためには、どうすればいいのだろうか?

 ここでは、実際に起きた事故を取り上げ、自然の中にはどんな危険が存在しているのか、どうすれば事故を防げるのか解説した羽根田治氏の著書『これで死ぬ アウトドアに行く前に知っておきたい危険の事例集』(山と溪谷社)から一部を抜粋。アウトドアスポーツやレジャーで遭遇する動物の危険性と、事故を未然に防ぐための知識や応急処置方法などを紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)

写真はイメージです ©AFLO

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クマに襲われて死ぬケース

 北海道の北見山地南部、天塩岳に近い浮島湿原に続く林道で、7月中旬、60代の女性が倒れて亡くなっているのが見つかりました。遺体の後頭部には大きな傷が、腕や背中にも引っかき傷があり、近くには動物の糞も残されていました。これらの痕跡や専門家による現地調査の結果などから、女性は車を停めた場所からひとりで浮島湿原へ向かおうとして、ヒグマに襲われたものとみられています。

 現場周辺は、地元ではよく知られたヒグマの出没エリアで、浮島湿原へは反対側のルートからアクセスするのが一般的となっています。女性がたどろうとしたルートはほとんど使われていませんでしたが、入ろうと思えば入れる状態だったとのことです。

 5月下旬、秋田県玉川温泉近くの山の中で、山菜採りをしていた60代女性が、血を流して倒れているのを知人男性が発見し、警察に通報しましたが、現場で死亡が確認されました。頭部に引っかき傷などがあったことから、クマに襲われたものと推測されます。女性は腰にクマ除けの鈴を2つつけていました。現場の玉川地区はタケノコや山菜が豊富な場所で、多くの人が入山していますが、ツキノワグマの目撃情報も多数報告されています。この事故の前年の5~6月には、現場から50キロメートルほど離れた秋田県鹿角市十和田大湯で、山菜・タケノコ採りをしていた4人が、相次いでクマに襲われて死亡する事故が起きていました。

・死なないためには?

 もともとクマは臆病な動物だが、クマと人間が至近距離で突然出会ってしまうと、我が身を守るために攻撃を仕掛けてくる。目撃情報がある場所には近づかない、クマ鈴やラジオ、笛などで音を出しながら行動する、新しそうな足跡や糞があったらすぐに下山するなど、とにかく遭遇しないようにすることだ。