変わりつつある人間とクマとの関係性
環境省の統計によると、クマによる人身被害は、2010年以降、少ない年で50件前後、多い年で140件前後が報告されている。人身被害は50~150人程度、このうち0~5人ほどの死者が毎年出ている。ちなみに人身被害は、ヒグマが生息する北海道と、ツキノワグマの生息域である中部以北で多発しているが、岐阜や京都、北陸地方や中国地方でも散見される。年によって被害にバラつきがあるのは、クマの食料となるブナやミズナラなどの堅果類の出来に左右されることが指摘されており、不作の年にはクマが餌を求めて人里まで下りてくるため、人身事故が増える傾向にある。
さらに近年は、クマを取り巻く環境も昔とはずいぶん変わってきた。山に棲むクマと、人間が生活する人里との緩衝地帯的な役割を果たしていた里山は、過疎化や高齢化などにより荒廃が進み、クマが頻繁に出没するようになっている。クマと人間の距離が縮まったことで、両者が遭遇する機会が多くなり、人間を恐れない“新世代のクマ”も現れはじめた。また、我が身や我が子を守るためではなく、捕食目的でクマが人間を襲ったのではないかとみられる事故も、北海道や東北で起きている。
全体的に見れば、通説どおりクマは総じて臆病な性格で人間を恐れるものだと思うが、その定義に当てはまらないクマは間違いなく存在する。クマが絶滅したとされる九州以外で野外活動をする際には(四国には剣山周辺に20頭前後のクマが生息しているといわれている)、そのことを頭のどこかに置いておいたほうがいいだろう。
ハチに刺されて死ぬケース
北海道の羊蹄山で8月上旬、女性がハチに刺されて防災ヘリで病院に搬送されるという事故が起きました。場所は比羅夫コースの2合目付近で、朝6時50分ごろから夫と2人で登山を開始した40代女性が、7時過ぎにハチに刺され、心肺停止状態に陥りました。近くにいた登山者が夫から依頼を受け、「女性がハチに刺されて呼吸が止まりそうになっている」と110番通報し、女性は防災ヘリで救助されましたが、搬送先の病院で死亡が確認されました。
死因はハチ毒のアナフィラキシーによるショック死とみられています。女性の足首にはハチに刺されたような痕があり、夫の話によると「妻は以前にもハチに刺されたことがある」とのことでした。
・死なないためには?
ハチは甘い匂いや黒い色に反応する。野外で活動する際には、化粧や香水、制汗剤、黒いウェアなどは避け、なるべく肌が露出しないように、長袖シャツや長ズボン、帽子などを着用する。ハチが周辺を飛び回っていたら、近くに巣があるかもしれないので、静かにその場から離れることだ。