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「私は母の債務なのだろうか」“不倫の子”ゆえに生きづらさを感じたことも…そんな東大卒作家を救った「本妻の子の言葉」とは?

「私は母の債務なのだろうか」“不倫の子”ゆえに生きづらさを感じたことも…そんな東大卒作家を救った「本妻の子の言葉」とは?

ハミ山クリニカインタビュー #2

2023/09/18

genre : ライフ, 社会

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 今も昔も不倫は世間からバッシングされるものであるが、それもハミ山さんを苦しくさせる。

「不倫は、相手の家族が苦しむ悪いことであるのは大前提。だけど不倫の後始末を負わされるのは結局、女性側が多い気がします。

 悪いことをしたのだからある意味では当然の債務であり自己責任ですが、同時に私のような『不倫の子』の立場の人間は『私という存在は母親の債務なんだろうか』という気持ちにもなる。結局あらゆることの皺寄せは、親の不倫の結果生まれた子供に来ることになり、生まれた時から咎(とが)を背負っているような気分です」

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ハミ山さんを救った「異母兄弟の言葉」

 そんな思いの中で唯一救われたのは異母兄弟が、ハミ山さんを受け入れてくれたことだ。

「父の不倫の事実を知った後はやはり相手の家族に申し訳なく、私の存在そのものがすみません……という気持ちや負い目を持ち続けていたのですが、数年前に兄弟たちと交流が生まれてから、兄弟は私を責めることはまったくありませんでした。

 父の本妻が既に亡くなられていたこともあるでしょうが、“なんか父がすみません”みたいなカジュアルなノリで、私の存在を負担に思わないでいてくれた。そこから父の別の顔も知ることができ、何となくですが私の家族の成り立ちについて、想像したり、受け入れたりもできるようになってきたように思えます」

 存在を申し訳なく思う気持ちは本来、ハミ山さんが背負う必要のないものだ。しかし人情的にはどうしてもそうなってしまうだろう。そうした気持ちは、自己肯定感の低さにもつながっている。

「汚部屋そだちで普通の生活を知らないし、不倫で生まれた子ども。一般常識が分からず、自分が全部間違っていると思ってしまう。すると、誰かが褒めてくれても『そんな人間ではありません』と、すごくおろおろしてしまう。自分で自分を認められないんです。何をするにも、後ろめたい気持ち。度がすぎて挙動不審になり、場を微妙な空気にしてしまったりすることも度々ありました」

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