「両親が不倫関係で正式な夫婦ではないことは、大学時代に父が亡くなるときまで私に知らされることはありませんでした」

 両親が不倫の関係だと告げられず育った子どもは、どのように成長するのか。婚外子である子どもの目線から、家族の成り立ちや葛藤を描いた作品が『なんで私が不倫の子 汚部屋の理由と東大の意味』(竹書房)だ。「不倫の子」ゆえに経験した、その生きづらさを作者のハミ山クリニカさんに教えてもらった。(全2回の2回目/前編を読む)

「不倫の子」として生まれたハミ山さんが直面した「困難」とは――(画像:『なんで私が不倫の子』より)

◆◆◆

ADVERTISEMENT

母がシングルマザーという認識はなかった

 ハミ山さんは、幼少期から母親との二人暮らしをしてきた。幼い頃はそこで父もよく過ごしていたし、時には一人住まいをしている父の家に遊びに行くというスタイルだったので、長年”母がシングルマザーだった”という認識はなかったという。

「他の一般家庭を知らないのでそうした暮らしに疑問を持つことがなかったものの、常に両親に隠し事があることは感じられました。両親の間に、子供の私には不可侵な領域があるようで、何となく疎外感を覚えていましたね。結局、父にはほかに正式な家族がいたこと、両親が不倫関係で正式な夫婦ではないことは、大学時代に父が亡くなるときまで私に知らされることはありませんでした。多くの家庭に、子どもに言えないことはあるでしょう。例えば不仲な両親が離婚を考えていても、決定するまでは、わざわざ子どもに言わないとか。

 だけど家族がどういう状況なのか、自分が何者なのかを子供自身が知る権利はあって、親はいつかは子どもに現実を言わなくてはいけない。感覚としては、養子縁組の真実告知などに近いかもしれません。それを伝えてもらってなかったというのが『なんで私が不倫の子』に描いた話です」

婚外子として育ったハミ山さん(画像:『なんで私が不倫の子』より)

「いつかきちんと話そうと思っていたが、機会がなかった」という感じでもない点が、今もハミ山さんを複雑な気持ちにさせる。

「両親は“なんとなく”で、私に伝えないままにしてしまったのでしょう。真実を知ったらショックだろうからと、あえて言わずにいたという感じでもない。今日言わなくて平気だったから……という、場当たり的な対応の積み重ね。

 それこそ、私と母が汚部屋で炊飯器をなくしてレトルトごはんを食べ続けたのと同じような場当たり的な対応と、似たような感覚では。親にも色々と事情はあったと思いますが、やはり真実を子供に伝えることは親としての責任だったと思います」