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「若いから夜の商売あるよね」虐待の後遺症で接客できない女性が行政の生活相談で浴びた信じられない言葉

source : 提携メディア

genre : ライフ, 社会

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どれだけ追い詰められているか児童相談所も理解せず

父が珍しく、誕生祝いのプレゼントとしてタブレット端末をくれたことがある。それを使って、中学1年のころ、インターネットを通じて異性との交際を仲介する「出会い系サイト」にアクセスしてみた。知らない男性から連絡が来た。何をするのかもわからないまま駅で待ち合わせ、公衆トイレの中で男性が求める通りのことをすると、5000円渡された。それで菓子やパンを買い、帰宅して妹にも渡すと、妹たちは、喜んだ。

中学3年の時、学校の配布物の中に、子どもの悩み事の相談先として児童相談所のカードが入っているのを見つけた。助かるかもしれないと、ネットで場所を調べ、放課後、出向いた。だが職員は、現状をいろいろ聞いた後、「でも君はここに1人で来られているからね」と言った。どれだけ追い詰められているのかわかってくれていないと、落胆した。

高校卒業後、県外の大学に入学したのは、家を出られると思ったからだ。朝食と夕食付きで月6万8000円の大学の女子寮に入った。寮生活で初めて友だちができ、やっと望んでいた「普通の生活」をつかめた。父は、入学金と授業料は出してくれたが、やがてそれも途絶え、奨学金とアルバイトで生活を立てた。

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バイトしながら大学に通うが、虐待の後遺症で接客業は困難

身を守れるようにと大学では労働法を専攻したが、バイトのため求人を探してみると、労働法以前の職場ばかりだった。「クレープを焼きながら楽しくお話ししませんか」という求人があり、行ってみるとクレープを焼く人は別にいて、男性客の横にすわって話をするキャバクラのような仕事だったこともある。

困ったのは、スーパーや販売店などの接客のバイトが難しいことだった。虐待の後遺症か、客と対応していると意識を失うことがあったからだ。警備のバイトなら現場に立っていればなんとかなると、これをつないで大学生活を続けた。

常勤の警備員と違い、学生バイトはイベントなどがあった時の臨時の警備に配置される。現場が遠くても移動時間に対する賃金や交通費は払われず、現場にいる8時間に最低賃金水準の時給を掛けた1日8500円程度にしかならない。そこへ2020年3月からのコロナ禍が到来し、イベントが激減した。