文春オンライン

「『プロレスと同じじゃないか!』ってふざけたことを言う政治家、何が同じなんだって」長州力が熱く語った、猪木の“人生のマッチメイク”

『教養としてのアントニオ猪木』より #1

2023/11/10

genre : ライフ, 社会

note

いかに自分の才能や実力を仕事で見せていくか

《長州の言う「メイクする」とは、試合を組むだけでなく、シチュエーションを作る、キャラクターを作るといったさまざまな意味が込められているようだ。どうやら、そういう作業を施すポジションの人間がいてプロレスは成り立っている。》(『Number 1006号』)

 だからこそ、猪木はプロレス界から政界に行ったあとに気づいたのだ。「政界も同じだ」と。

 なのでマッチメーカーの経験もある長州に「国会の中の政治家ってみんなマッチメイクだぞ」

ADVERTISEMENT

 と言ったのである。政治家とプロレスラーは似ていると感じたのだ。国民から選ばれて入ってくるけど個人が自由気ままに振る舞えるわけではなく、まず政党(=プロレス団体)の中で与えられた役目をこなすという似たような構図に。

 長州の言葉が炸裂するのは、ここからだ。

《プロレスって人からああだこうだって言われるけど、それはたしかにつつかれる部分もあるかもわからない。でもレスラーはみんな真剣に仕事をして行動をしなきゃいけない。そりゃ中にいたら不平不満もあるだろうけど、それでもいかに自分を見せていくか、自分の才能や実力なりを仕事で見せていくかっていう。これはマッチメイクじゃん。》(『KAMINOGE131号』)

©文藝春秋

長州が熱く語る、“マッチメイク”の意味

 そして政治家への言葉が。

《よく政治家がプロレスを引き合いにして、「プロレスみたいな八百長をやっているんじゃない」

「まるでプロレスみたいじゃないか」って言うだろ。》

 徐々にトーンが上がってくる。

《「プロレスと同じじゃないか!」って何が同じなんだって。そういうふざけたことを言う政治家、おまえらは真剣に人生をマッチメイクしたことがあるのかって。俺たちは真剣にマッチメイクをやっていたんだよ。それを「どうせプロレス」って片づけられたくない。そこだけは言っておかないと。》

 読みながら思わず長州コールである。さらに、こう続ける。

《プロレスにたとえてああだこうだと言う政治家が何人かいるけど、俺はその人たちに言葉を投げかけてあげたい。会長のマッチメイクっていうのは常に真剣なんだよ。そこはもう自分の人生をどういうふうに生きていこうかっていうマッチメイクであって、会長はその先頭だよね。》

 いかがだろうか? 長州が熱く言わんとする意味が見えてこないだろうか。

 長州からすれば政治家の側は与えられた座組や役割で、必ずしも精一杯働いているようには見えない。しかしそんな政治家から、よりによって茶番のようなことを「プロレス」だとは例えてほしくない。俺たちは上からマッチメイクされたらそれに応えるのに必死だし、自分が上がっていくために自分をマッチメイクすることもある。そこに真剣なんだと。