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「あまりに幸せそうだから別れた前妻も遊びに来る」波瀾万丈なフランス男性が教えてくれる"生き方のヒント"

source : 提携メディア

genre : ライフ, ライフスタイル, 国際

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いつの間にかスーツに着替えたポールさんが慌ただしく家の中を立ち回り、奥さんから何かガミガミ叱られながら、手渡された錠剤を口の中に放り込んでいるのが見えた。会社までの道すがら私を駅まで連れていくとポールさんに言われ、私は慌ててどんぶりの残りを飲み干すと、再び薄暗い外へ出た。それが、私の1カ月をかけたフランスとドイツの波瀾(はらん)万丈の旅の始まりだった。

4~5年後、看護師と再婚し南仏に移住していた

その旅から数年後、イタリアのフィレンツェで留学生活を送っていた私のところへ、母がフランス料理の調理師免許を取ったばかりの妹と訪ねてきたことがあった。妹がカルメンさんの紹介でリヨン近郊の小さな料理店でしばらく修業をすることが決まったので、一緒に行かないかと誘われ、私も急遽フランスで夏休みを過ごすことにした。

14歳の時に訪れたきりになっていたカルメンさんの家に親子でしばらく厄介になり、妹の料理店での仕事も始まったので、そろそろイタリアに戻ろうかと思っていると「せっかくだから、私たちと一緒に南仏のドラギニョンにいる叔父の家に2、3日遊びに行かない?」と誘われた。「プールもついている豪邸よ?」とカルメンさんはすっかり行く気満々になっている。「ほら、覚えてる? あなたをシャルル・ド・ゴールまで迎えに来たポール叔父さん。あの人今ドラギニョンに住んでるのよ」とにやにや笑っている。

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彼女の話によると、ポールさんはあのあと頭にカーラーをいっぱいつけていた奥さんとは別れ、持病をこじらせて入院していた病院で看護師をしていた女性と再婚したのだという。その人の実家がドラギニョンだったので、生まれ故郷のパリを離れて移住をしたのだそうだ。当時、パリでポールさんに出会ってからまだ4、5年しか経っていなかったが、その間にそんな展開になっていたのかと驚きつつ、新しい人生のスタートを切った老齢男性の様子を見るのも面白そうなのでカルメンさんの誘いに乗ることにした。