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無報酬で交通・滞在費も自腹…北アルプス山小屋「夏山診療」をした女医が担う"プリズンドクター"の意外な年収

source : 提携メディア

genre : ライフ, 医療, 働き方

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使命感からではなく、医療の原点を感じたくてその後も10年近く続けた。足元に広がる雲や頭上の流れ星を今でも思い出すという。

原点については、矯正医官の仕事にも感じることがあるという。

「一般病院では途中で来なくなってしまう患者さんがいます。治ったのか、別の病院に行ったのかわからずに気になることもあるのですが、刑務所の場合、刑期を終えた人は別として、絶対に最後まで診ることができるので、医師としては幸せですね(笑)」

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また、おおたわさんは、聴覚支援学校(旧ろう学校)の校医も務めている。もう20年にもなる。

「これももともと、父がやっていたのを引き継いだだけなんですけどね」

障がいのある子供たちとのコミュニケーションは、それなりに時間がかかる。障がいの度合いや症状もさまざま。支援学校の校医もやはり、あまりなり手がいないのだという。

プリズン・ドクター、夏山の診療所、支援学校の校医……。語弊があるかもしれないが、「一般的」とはいえない選択を、どうしておおたわさんは続けているのだろうか。

しばらく考えた後、おおたわさんは口を開いた。

「それが私のなりわいだからです。仕事だから引き受ける、それだけですね」

そしてもう一度考えた後、続けた。

「父が、そういう人でした」

おおたわさんの経歴
1983年 筑波大学附属高等学校卒業
1989年 東京女子医科大学医学部卒業
内科医師の難関、総合内科専門医の資格を持ち、多くの患者の診療に当たる。

おおたわ 史絵(おおたわ・ふみえ)
総合内科専門医/法務省矯正局医師
東京女子医科大学卒。大学病院、救命救急センター、地域開業医を経て2018年よりプリズン・ドクターに。医師と並行して、テレビ出演や著作活動も行っている。著書に、薬物依存だった母親との関係を描いた『母を捨てるということ』(朝日新聞出版)や、矯正医官として“塀の中の診察室”の日々をユーモアに綴った『プリズン・ドクター』(新潮新書)などがある。
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