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「『ピルでも飲んどけ』っていう前に『コンドームつけとけ』」実はアメリカより着用率は高いが…日本男性の“射精責任”の実態

『わっしょい妊婦』×『射精責任』対談#2

note

村井 今の高校生ってみんなストレートに愛情表現もするし、セックスに関しても素直で、見ていて正直いいなって思います。

小野 へえ。「恥ずかしいもの」「後ろ暗いもの」ではない?

村井 ないんですよ。隠さなきゃいけないものではなく「愛し合ってたらするでしょう」「好きな人といたらしたいよね」みたいな、そんな感じで話してましたね。

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小野 いいですね。女子だけ別室に集められていた私たちの世代とは、全然違いますね。

射精責任はどこまで取るべき?

りり子 『射精責任』は射精に責任を持つ話、『わっしょい妊婦』では中絶についても書いています。だから、出産せずに中絶という選択をするときの責任の所在問題について、皆さんに聞きたいと思ってたんです。

 小野さんは日本における中絶について、女性が自分で決めるという感覚が希薄なんじゃないかって書いていますよね。確かに、同意書に男性がサインする欄があったりして、女性が1人で決めづらい現状がある。

 じゃあ望まない妊娠が起きてしまった場合、男性も責任を負うんだけど、最終的な選択権は女性にあるわけで、男性はどんなスタンスでいるのがいいんでしょうね。

小野 それは女性の希望通りにするべきですよ。男性に責任取ってほしけりゃ責任を取らせるべきだし、女性が自分で決めたいなら自分で決める。責任の配分をどうコントロールするかの権利も女性にあるべきだと私は思ってます。

 日本の場合は、産む権利・産まない権利が女性のものであるという意識もまだまだ希薄です。かといって男性側、女性のパートナーが責任を引き受けるものでもない。どこに責任があるのかわからない曖昧な感じになっていますよね。

 だからこそ、例えば女性が中絶するのに男性の同意が必要とか、経口中絶薬が承認されるのに時間がかかったとか、承認されても10万円かかるとか、そういう状況になってるんじゃないかなって思うんですよね。

ふじさわ 今の日本では妊娠出産が誰のものでもないっていうのは、本当にそうですよね。女性は「自分の体のことは自分で決めるぞ」と思い切れてないし、かといって男性も「妊娠出産は俺のものなんだ」って感じでもないっていう。誰が何を決めてんの、みたいな。

小野 中絶ができる期間って決まってるんですよね。初期中絶は12週まで、中期中絶は22週までできるけど、すごく大変な手術になってしまったりとタイムリミットがある。

 この前、8歳の重度障害児の息子を殺して心中しようとしたお母さんが逮捕されて、公判を受けたニュースが話題になっていましたよね。その人は5回流産していて、でも夫は子どもが欲しくて、なんでうちには子供がいないんだってずっとDVをされていたと。妊娠したくなくてもずっと妊娠させられ続けていて、子どもを産ませられていたことが背景にあったって。

 今の日本の社会では、男性の同意によって中絶できるかどうかが左右されてしまうのは、女性にとってすごく危険だし、本当に「射精責任」を男性に100%問えるような社会になってからじゃないと難しいんじゃないかなっていうのが率直な感想です。

『射精責任』を読んだときにも思ったんですけど、こういう本が出て日本で話題になっているのは希望ではあります。でも、その内容が社会の肌感覚として導入されるまで、私達は一体あと何十年待たなきゃいけないんだろうという絶望も同時に感じました。

ふじさわ 確かに。それを早くするための出版でもあるんですけど……。

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