女性にとって、母にとってハードモードな社会での妊娠出産体験を描く『わっしょい!妊婦』の著者である小野美由紀さんと、「中絶の責任は100%男性にある」と書いてアメリカで大きな反響を呼んだ、ガブリエル・ブレア著『射精責任』の訳者である村井理子さん。

 一見「異色」でありながら、根幹のテーマは繋がっている2冊を7月に刊行した両名が、2023年10月4日にX(旧Twitter)のスペース機能で行った対談の一部をまとめた。参加者は小野さんと村井さんに加え、『わっしょい!妊婦』の担当編集者である伊皿子りり子さん、『射精責任』の担当編集者であるふじさわさんの4名。

『わっしょい!妊婦』を読んで17年前の自身の出産を思い出した村井さんが、双子の男の子を産んだことで周囲からかけられた、驚きの「呪いの言葉」とは――。(全2回の1回目/続きを読む)

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©CavanImages/イメージマート

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世間の知らない「本当の」妊婦の姿

小野美由紀さん(以下、小野) 『わっしょい!妊婦』は、私の妊娠が発覚してから出産までの十月十日を描いたエッセイなんですけど、読まれた方には「よくある妊娠出産エッセイとは違うね」って言われるんですね。

 個人の経験を通して見えてくる、子どもをこの世の中で産み育てることの難しさとか、女性が母として置かれる環境に「これおかしいやろ」と思う話を、ときに白目をむき、ときに混乱し激怒しながら言及しつつ、出産に向かっていく、そういう流れのエッセイになっております。

 中には、私自身の中絶の経験を書いているところもあって、それは『射精責任』と通じる話でもあると思います。あとは「出生前診断」っていう、子どもに障害があるかどうかを調べる検査があるんですが、そのことにも言及していたり。

伊皿子りり子さん(以下、りり子) 担当編集者として言わせてもらいたいんですけど、今の小野さんの紹介だとハードルが高い社会意識の強い本なんかなと思うじゃないですか。そういう側面ももちろんあるんですけど、担当編集した中で一番笑った本かなってくらいほんま面白いんですよね。めっちゃ笑えるんですよ。

 私は経験がないので、妊娠出産をする中で実際にどんなつらいことが身に起きるかは、知ってはいるけど想像できない部分が大きいんですよね。でもそれを巧みな比喩や表現を織り交ぜつつ解説していて「ああ、これほんまキツそう」ってよくわかったし、しかも笑いながら読めて最後は号泣……みたいな、初めての経験でした(笑)。