1ページ目から読む
2/5ページ目

村井理子さん(以下、村井) 私は『わっしょい!妊婦』を読んで、17年前の自分の出産のことをめちゃくちゃ思い出したんですよ。ほんの少しのホルモンで「これだけ翻弄される?」っていう10ヶ月を、まざまざと思い出しました。帝王切開ってお腹をサクッと開いてワーッて取り出すイメージがあるけど、本当はひっぱがす感じですよね。

小野 そうですよ。内臓をにゅるって、力ずくで絞り出すみたいな感じ。お手軽な手術みたいなイメージがあるけど、全然違いますよね。

村井 私は双子だったので、二連発で超大変でした。自分のお腹が開かれているのはわかるし、臓器をかき回されているようで、すごく痛い。暴力みたいな感じです。死ななくてよかった、って思っちゃいました。

ADVERTISEMENT

 子宮って子どもがお腹にいる間は思いっきり広がってるけど、1時間ぐらいでギューって元に戻るらしくて、あれもすごい気持ち悪いんですよね。

小野 後陣痛ですね。産んだ後もずっとお腹痛いんですよね。

 妊娠する前は、誰もそんなこと教えてくれないんですよ。世間が思う妊婦像って、ロングヘアーの綺麗な女の人がピンク色のマタニティードレスに包まれて、エンジェルみたいにニコニコしてるイメージかもしれないけど。いやいや、戦いだからね。

村井 そうそう、いろんなところから漏れたり出したりしてるし(笑)。『わっしょい!妊婦』には妊婦の食欲や吐き気、つわりの苦しさも生き生きとした描写で書かれていて、いろいろ思い出しました。これは男性に絶対読んでほしいなって思いますね。

わっしょい妊婦』小野 美由紀(CCCメディアハウス)

「中絶ができなくなるかも」ってなって爆発

りり子 つづいて担当編集者のふじさわさんに、『射精責任』を版権獲得して日本で出そうと思った経緯を教えていただいてもいいですか。

ふじさわさん(以下、ふじさわ) アメリカではずっと中絶の是非について論争が行われていますが、女性の中絶する権利を一定程度保障してると言われていた1973年の「ロー対ウェイド判決」が、2022年6月に最高裁によって覆されてしまったんですね。『射精責任』はその直後に書かれた本ということで、エージェントから紹介を受けました。

小野 著者であるガブリエル・ブレアさんの大量のツリーをぶら下げたツイートが爆バズったのがきっかけで書籍になったんですよね。

村井 そうそう。著者が「これを書いたら絶対に炎上するよね」と思って、ずっと心の中に温めていたことが、 ロー対ウェイド判決がひっくり返って中絶ができなくなるかもってなったときに彼女の中で爆発して、書いちゃったみたいな感じでしたね。