今も残るジェンダーの呪い、母親への呪い
小野 妊娠出産って女性の体に対する負担がものすごくて、人生を変えてしまうぐらいじゃないですか。でも、妊娠の責任だったり痛みだったり人生に対する負荷みたいなものを、女性だけが引き受けざるを得ないような社会が、日本においては今のところあんまり変わりそうにないですよね。
出産を経てみて思うのは「娘にはこの痛みを感じないでなんとか生きてほしい」と、ひしひしと感じていて。村井さんが語られたみたいに、次の世代に残してはいけないなっていう気持ちがすごいあるというか。
村井 すごくよくわかります。うちは男の子なんだけど、同級生の女の子とか見ると、今まで私達が渡しそうになっていたバトンは、絶対に渡しちゃ駄目だなって思いますよ。自分の娘でなくても、この子たちにあんな思いはさせたくないってすごく思う。
小野 『わっしょい!妊婦』でもジェンダーの呪いの話を書いてます。極端な例ですが、90代のおばあちゃんに「お腹の子は男の子? 女の子?」って聞かれて、男の子だって勘違いした相手から「男の子はいいわね、財産になるもの」って言われた話です。そういうジェンダーバイアスみたいなものって、親が植え付けたくなくても受動喫煙みたいに世間から植え付けられてしまうんだっていう。村井さんは実際に双子の男の子を育てられていますが、どんな実感がありますか。
村井 双子ってだけで「儲けもん」って言われるし、それも男の子の双子って言うと「でかした」ってすごい言われるんですよ。
小野 男を2人この世に生産したから「でかした」と。
村井 そうそう。それでめちゃくちゃ褒められる状況に対して、引きに引きました。
双子を産んで一番褒められるのはお母さんなんですけど、中でも自然分娩した人は尊敬のまなざしですよ。それから、妊娠何週で産んだかとかね。双子の場合、1日でも長く腹の中に留めた人が勝ちみたいなところがあるから「何グラムだった」「うち2000超えてた」みたいな。
やっぱりそういう“圧”ってあるんですよ。「あそこは双子で男の子だから」っていう周りからの反応は、母親が思うよりもずっとありますね。
小野 そんなとこで勝ち負け競う? しかもその責任も誉れも全部母親に行くっていう謎の仕組みがありますよね。