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「抱かれたい男」→「ゆるふわイケおじ」に…? 53歳になった竹野内豊が放つ“異彩”とは「反町隆史や木村拓哉らとも…」

2024/02/01
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 そもそも『ビーチボーイズ』は、行き場を失くした都会の男2人が、海沿いの民宿「ダイヤモンドヘッド」で自分の人生と向き合う、モラトリアム期を描いたドラマだ。

 反町演じる広海は養ってもらっていた恋人に捨てられ、竹野内演じるエリート商社マンの海都は、自身が立ち上げたプロジェクトに失敗する。居住と雇用を求めてダイヤモンドヘッドにやってきた広海に対し、海都は旅行客の1人にすぎなかった。

1997年に放送され、平均視聴率が23%、最高視聴率は26.5%を記録した『ビーチボーイズ』(BSフジ公式サイトより)

革ベルトの腕時計をそっとしまい…

 特に序盤で印象的なのは、広海と海都がそれぞれ着けていた腕時計を外すシーンである。広海が第1話でSwatchの腕時計を躊躇いなく海に捨てる一方で、海都が時計を外すのは第3話だ。一度会社に連れ戻された海都は、ダイヤモンドヘッドを再び訪れる前に、黒い革ベルトの腕時計をそっとカバンにしまう。その行為には、第1話の広海と同じように「時間に急かされることなく、海を楽しみたい」という海都の思いが反映されている。

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 しかし、海都が身につけていた、いかにも男性的な革ベルトの腕時計は、当時の男性たちが背負わざるを得なかった社会的な責任や“男性らしさ”のメタファーのようにも映り、そこからも解放されたかったという彼の切実な思いも感じられるのだ。1990年代のドラマにおいて、世間が求める男性らしさに悩む海都の姿は、当時としても珍しいキャラクターだったのではないだろうか。

竹野内豊

竹野内豊が求められる理由

 いまなお主役クラスで活躍する俳優が多く、層が一段と厚いアラフィフ世代の中で、それでも竹野内が求められつづける理由は、円熟した渋さと柔らかさ、対極にあるはずの要素を軽やかに表現できる稀有な存在だからだろう。

“抱かれたい男”という表現はあまり使われなくなり、サラリーマンたちが身につける腕時計は、革ベルトよりもApple Watchが主流になってきたけれど、時代は大きく変わっても、竹野内豊がさまざまな世代の視聴者を惹きつける、魅力的な俳優であることに変わりはないのだ。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。次のページでぜひご覧ください。

「抱かれたい男」→「ゆるふわイケおじ」に…? 53歳になった竹野内豊が放つ“異彩”とは「反町隆史や木村拓哉らとも…」

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