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安易に「認知療法」を勧めない――「うつ」に関する10の誤解 9・10

與那覇 潤『知性は死なない』より特別公開

2018/04/16
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 躁うつ病(双極性障害)を患い、大学を休職、ついには離職に至った與那覇潤さん。このたび『知性は死なない――平成の鬱をこえて』を上梓し、詳細に体験を著しました。本書の第2章より、「『うつ』に関する10の誤解」を5回シリーズで公開します。

前回「うつ」に関する10の誤解  7・8

誤解9 「カウンセリング」が重いうつに効く

『知性は死なない 平成の鬱をこえて』與那覇 潤 著)
『知性は死なない 平成の鬱をこえて』與那覇 潤 著)

 試しにグーグルに「カウンセリング」と入れてみてください。有象無象(うぞうむぞう)の「カウンセリング・ルーム」の数々がヒットすると思います。医療機関内でおこなわれているカウンセリング・サービスがヒットすることもありますが、多くは医師免許と無関係におこなわれている、純粋な民間の施設でしょう。

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 保険が効かないため利用料金は非常に高額で、たとえば都内だと1時間で1万円前後が相場です。なかには電話で相談に応じるかわりに、30分単位で追加料をとるといったところもあります。

 私はこのような施設にお世話になったことがないので、具体的になにがそこでおこなわれていて、どの程度効果があるのか、については論評できません。

 ただ「医療機関で抗うつ薬をもらっても、効果が出ない」、ないし「薬を飲むのはこわいから、なんとかカウンセリングだけでなおしたい」といった切迫(せっぱく)した気持ちの人が、これだけ高い料金をとるならきっと成果が出るにちがいないという思いで駆けこむのは、以下の理由でおすすめできないので、あえてこの項目を立てることにしました。