文春オンライン
立ち食いそばの空白地帯・鶴見に待望の新店が…寿司屋の大将が生み出した“関西つゆ”は格別の味だった

立ち食いそばの空白地帯・鶴見に待望の新店が…寿司屋の大将が生み出した“関西つゆ”は格別の味だった

2024/03/26

genre : ライフ, グルメ,

note

 店内は4人掛けテーブルが2つに8人は座れるカウンターと寿司屋仕様でゆったりと落ち着いた雰囲気である。

寿司屋だけにゆったりとした店内

 寿司カウンターの上に並ぶ「かき揚げ」「えび天」「ごぼう天」「なす天」「春菊天」「ちくわ天」「ししとう天」「コロッケ」などはすべて加賀谷店主が揚げているという。おにぎりの鮭、明太子、味付け昆布、うめなども加賀谷店主の自家製である。「いなり寿司」は前夜、寿司屋の大将が作ってくれるという。

 人気メニューをきいてみると「かき揚げそば」「春菊天そば」「えび天そば」だという。さっそく「春菊天そば」を関西つゆで注文した。ついでに「うめおにぎり」も追加注文した。

ADVERTISEMENT

たくさんの天ぷら、おにぎり、いなりが並ぶ
寿司のメニューの上にそば屋のメニュー

開店の経緯が深かった

 作ってもらっている間、加賀谷店主に開店の経緯「そば屋誕生のヒミツ」を聞いてみたのだが、これがまた深い話だったのである。

 加賀谷店主はもともと「浜ッ子寿司」の常連だった。寿司屋の大将は怖くなく、すごくいい人だという。安心した。その「浜ッ子寿司」の大将が10年程前、大病を患った。その時、大将は家族が食いっぱぐれないようにと「そば屋を昼間やったらどうだ」と家族にアドバイスして、つゆのレシピ、そばの手配、天ぷらの揚げ方などを克明に記した「大将のそばノート」を作成した。家族はそれを見てそば屋をやって繁盛し店を守ることができたという。その後、大将は無事に退院し「浜ッ子寿司」は晴れて復活した。

 しかし、常連さんからは「昼にそば屋やらないのか、あのそばはうまかったよ」とたくさんのリクエストがずっとあったそうだ。それを聞いていた加賀谷店主のおばあちゃんが「私がやります」ってことで今年1月にオープンする予定だった。ところが、持病の腰が悪化して、急遽、加賀谷店主に白羽の矢が立った。「じゃあやろうかなって気軽に返事して、すぐ3月1日にオープンとなってしまったので、ちょっとドキドキです」というわけである。

 しかも「つゆのレシピは当時の大将の味をそのまま再現しているんです」と加賀谷店主は話す。つまり、「春夏秋冬」は間借りのそば屋だが、10年前「浜ッ子寿司」の家族が作っていた愛あるそばの味が復活したという側面も兼ね備えているわけである。

加賀谷店主は気軽に返事したもののそこには深い話が

珠玉の関西つゆと春菊天に感動

 そうしているうちに「春菊天そば関西つゆ」(480円)と「うめおにぎり」(100円)が登場した。まずつゆをひとくち。出汁が香る透き通った素晴らしいつゆである。鰹節と昆布だしを合わせ、薄口醤油と少なめの砂糖で作った返しをあわせて作られているつゆである。