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台本は「喋り言葉」で書いてはいけない…トークが苦手だったオードリー春日を変えた"放送作家の乱暴な秘策"

source : 提携メディア

genre : エンタメ, テレビ・ラジオ

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「ああ、ラジオ番組というのは、アイドルたちが一人でちゃんと喋れるように育てる側面もあるんだな」と思いました。だから、所属事務所やレコード会社はアイドルにラジオ番組を持たせようとしていたのでしょう。

そうやって元々あまり喋れない新人アイドルのために台本を作っているうちに、トークの展開のさせ方がわかってきました。台本上で、あるいは打ち合わせで、「こういうことありますか?」と聞いてみたり、出てきた話を受けて「そっちより、こっちのエピソードの方がいいですね」とか、「そこはこういう話し方をしてみてはどう?」などとアドバイスをする。つまり番組では、アイドルが自分の頭の中を整理し、相手に伝わるように話す練習を毎週やっているのです。

それを繰り返すことで、私もまたアイドル番組に育てられたということになるんだな……と今にして思います。アイドルにかかわらず、基本は誰でも同じだと思っています。「ちゃんと喋れるアイドルが消えずに残っていく」の一歩隣に「トークのできる芸人が消えずに残っていく」がある。だから私は、のちにまだメディアでの喋り方に慣れていない芸人さんにアドバイスするようになったのでしょう。

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「ラジオ台本」はどのように作られているのか

では、アイドル番組ではどんな風にトーク台本を作っていたか? その典型的な例を書いてみましょう。人によって書き方は違うでしょうが、私はこんな風に書いていました。設定としては、デビューしたての17、8歳の女性アイドルAちゃんのラジオ番組。毎週30分。その冒頭5分程度は近況トークになります。放送時期はクリスマス前としましょう。こういう特別な日は、誰でも喋りやすいのです。

Aちゃん もうすぐクリスマスですね。

○街はイルミネーションがきれい。
 (表参道とか、渋谷とか、銀座とか)
  *どこか見ました?

○子供の頃、クリスマスはとても楽しみなもの。
*はやばやとツリーを飾ったり?
*サンタさんにお願いをしたり?
*チキンを食べたり……
*もちろんケーキも……
*テレビでは必ず『ホームアローン』をやってた。
*子供の頃、嬉しかったクリスマスプレゼントは?
〜など