文春オンライン

「24時間ぶっ通しの撮影」と「完徹続きの編集」 それでも終わらなかった『爆裂都市 BURST CITY』の熱狂

僕たちは8ミリ映画作家だった 石井岳龍編 #4

2024/04/29

source : 週刊文春CINEMA オンライン オリジナル

genre : エンタメ, 映画, 芸能, 社会

note

――予定どおり行くわけないだろう、みたいな。

石井 予定を守るという意味が解らなかった。ロケバスが来たというだけで喜んでましたし。チーフ助監督さんや制作部さんにはとても申し訳ないことをしました。

コント赤信号も驚いた「ロケ弁当はふりかけだけ」

――初めてですもんね。

ADVERTISEMENT

石井 ロケバスと、お弁当が出るという、それだけで珍しい。

 ほとんどが素人の寄せ集めで、プロ的だったのは笠松(則通)カメラマンとか何人かで、プロの仕事をしている人たちが制作陣や進行関係で入ってくれていましたが、そういう人たちも気を使ってか、「好きにやってみろ」みたいな雰囲気でした。

 それでだんだん立ち行かなくなって、最終的にお金がないからどうしようみたいなことになっていく。お弁当も、おかずがなくなった。

――お弁当もそんな感じになっちゃったんですか。

石井 コント赤信号の方たちが出演していて、後にギャグにしてましたけど、弁当をパッと開けたらご飯だけだったから、裏返して開けたのかと思って裏返したら、そっちもおかずがなかったという(笑)。 

――本当にご飯だけなんですか。

石井 ふりかけはかかってました。

――ああ(笑)。何かの間違いじゃないかとみんな思って。

石井 笑い話。

『爆裂都市 BURST CITY』 販売:東映

撮影終了後も2カ月以上完徹

――映画のコピー、すごかったですね。「これは暴動の映画ではない。映画の暴動である」。

石井 本当にそうなって。私の生活もダイナマイトプロもリアルに爆裂してしまいました(笑)。私の思いは、あり得ないチャンスのこの映画を作るからには、誰も見たことないようなモノを作りたいということ。自分の中では『戦艦ポチョムキン』とか『ナポレオン』とかそういう思い上がった目標を考えて、それを目指してやったんですけど。撮影も終わったと言えるのかどうか。初めて封切り日が決まっていて。

――締め切りがあったんですね。

石井 撮影はずっと24時間体制で赤羽の廃工場を舞台に連日終わるまでやっていた。その後の編集も2カ月以上、ずっと完全徹夜。それでも間に合わなかったんです。

 ほとんど奪い去られるようにダビング作業まで持っていかれて。だから、私の中では未完成なんです。

――もっと時間があればいろいろやりたかった。

石井 だけど、使いたい撮影済フィルムがどこにあるかも分からないような状態でグチャグチャになってましたので。プロ的なやり方をしなかったしわ寄せが全部最後に来て。