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「プレスリー妻のウエディングドレス」「オードリーのメタリックミニ」と「大量生産」「近未来」…映画衣装から見る<1960年代>という時代

2024/04/13

source : 週刊文春CINEMA オンライン オリジナル

genre : エンタメ, 芸能, 映画, 音楽, 社会

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 ミニスカートは“モッズ”と“スウィンギング・ロンドン”を代表するデザイナー、マリー・クワントが1959年に店舗展開し、その後、フランスのデザイナー、アンドレ・クレージュによって世界的なヒット商品になる。

 劇中でシャロンがミニスカートに合わせて履いている白いブーツは、近未来的なルックで話題を呼んだクレージュのヒットアイテムだ。古い価値観を打ち破った先に一足飛びに近未来を予測する。それは60’sファッション独特の視野感だ。

“近未来ファッションの仕掛け人” の登場

 同時代、ドレスの素材にメタルクチュール(金属製装飾品)を用いて、やはり近未来ファッションの仕掛け人と呼ばれたのが、スペイン生まれのデザイナー、パコ・ラバンヌ。

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 彼の作品は映画界の目利きにも注目され、オードリー・ヘプバーンは『いつも2人で』(1967年)のラスト近くのパーティシーンで、パコ・ラバンヌのメタリックミニで登場し、さりげなく場面をさらう。

 周りの女性たちが今は死滅した花柄のパンタロンスーツで踊る中、オードリーだけが時の洗礼を受けてないのは、パコ・ラバンヌが今も変わらずメタリックドレスを作り続けていることと無関係ではないだろう。

『いつも2人で』 © dpa/時事通信フォト

 ラバンヌはまた、SF映画『バーバレラ』(1968年)で主演のジェーン・フォンダが着る緑色のドレスもデザインしている。同作はSF映画マニアの間でマスターピースだ。

オードリー・ヘプバーンの衣装も既製服に

 モッズ世代がマリー・クワントの黒いミニドレスをチョイスする一方で、もう少し大人びた女性たちが好んだのが、ココ・シャネルが考案し、その後、『ティファニーで朝食を』(1961年)でオードリーが着たことで全女性の必須アイテムになるリトル・ブラック・ドレス(装飾の少ない極めてシンプルな黒いドレス)だ。

『ティファニーで朝食を』でリトル・ブラック・ドレス姿のオードリー・ヘプバーン ©Collection ChristopheL via AFP

 オードリーは『シャレード』(1963年)では盟友、ジバンシィがデザインした、つまりオートクチュールの赤いスーツやコートを着用。それは、当時オードリーと並ぶファッションアイコンだったジャクリーヌ・ケネディが愛用したシャネルのツイードスーツと時代感覚を共有するもの。