ティーンのアイドルとしてハリウッドスターの仲間入りをしたザック・エフロンも、もう36歳。ミュージカル、ロマンス、コメディなど、幅広いジャンルの映画で活躍してきた彼は、最新作『アイアンクロー』で完全なる変革を見せる。

脚本を読むまで知らなかった「悲劇の家族」

 実話にもとづくこの映画でエフロンが演じるのは、テキサス出身のプロレスラー、ケビン・フォン・エリック。

 ケビンと弟たちは、かつてレスラーとして名を馳せた父の指導を受け、日々、厳しい練習に励む。しかし、そんな仲の良い家族を、ひとつ、またひとつと悲劇が襲うのだった。

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「ショーン・ダーキン監督からもらった脚本を読むまで、この家族のことはまるで知らなかった。ひとつの家族にこんな多くの悲劇が起きるなんて、信じられないよ。これはレスリングについてではなく、家族についての映画。ケビンが何度も喪失に直面し、最後にはそれを乗り越えていく話。ものすごく深い話だ」

驚異的な肉体改造を行った『アイアンクロー』でのザック・エフロン。試合シーンのロープワークもモデルとなったケビン本人が絶賛するほどの完成度だったという © 2023 House Claw Rights LLC; Claw Film LLC; British Broadcasting Corporation. All Rights Reserved.

 ケビンは、4人兄弟の一番上。映画のはじめに、彼には兄もいたことが語られるが、実際には弟も、もうひとりいた。最後の弟を映画に入れなかったことについて、そこまで入れるとあまりに暗くなりすぎると思ったと、ダーキン監督は語っている。

「僕自身にも弟がいることが、このストーリーをよりパーソナルに感じさせてくれたと思う。兄弟は親友のようなもの。モチベーションを与えてくれる存在でもある。ショーンは、彼らの兄弟愛をしっかりと描いた。そして僕ら俳優は、本当の兄弟みたいになって、リングの中に入っていった。本当に素敵だったよ」