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ローリング・ストーンズの“忘れられた”リーダーの悲劇「俺のバンドを取られちまった」――『ROLLING STONE ブライアン・ジョーンズの生と死』

相澤冬樹のドキュメンタリー・シアター

2024/01/27

source : 週刊文春CINEMA オンライン オリジナル

genre : エンタメ, 映画

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 ストーンズといえばミック・ジャガー、キース・リチャーズが思い浮かぶ。しかしこのバンドを成功に導いたのは、創設者にして初代リーダーのブライアン・ジョーンズだった。20代前半で絶頂期を迎えながら、謎の死を遂げ、今では忘れられた存在になった男の生と死を追いかけたドキュメンタリーが登場。ローリング・ストーンズのファン歴半世紀近くのジャーナリスト相澤冬樹氏感涙の一本!

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傘寿を迎えたミック・ジャガーとキース・リチャーズ

 俺さあ、世界で一番イカしたロックバンドを作ったんだぜ。ローリング・ストーンズっていうんだけどさ、知ってる? え、ミックとキースなら知ってるけどブライアンなんて知らないって? 困るよなあ。まずは映画を見てくれよ。見れば俺の真価がわかるって。

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ブライアン・ジョーンズ © Chip Baker Films

 ローリング・ストーンズの名は、ロックファンならずとも聞いたことがあるだろう。1963年にレコードデビュー。長らくロック界の頂点に君臨するイギリスのロックバンド。その中心メンバーは、ボーカルのミック・ジャガーとギターのキース・リチャーズの2人で、ほとんどの曲作りを手掛けている。デビューから60年余、ミックに続きキースも昨年(12月18日)80歳を迎えた。ニューヨーク・タイムズスクエアのビルボードに「Happy Birthday Keith Richards」の巨大なメッセージが登場したのが記憶に新しい。新作アルバム『ハックニー・ダイアモンズ』を去年発売し、今なお現役最前線。かつての“若き反抗者”は傘寿を迎え、ますます意気軒高である。

ブライアンなくしてストーンズの成功はあり得なかった

 その陰で、ローリング・ストーンズを作った元々のリーダーの存在は、コアなファンを除き、ほぼ忘れ去られているように見える。ブライアン・ジョーンズ。彼なくしてバンドの成功はありえなかったという関係者の証言が、映画の冒頭で紹介される。

ローリング・ストーンズ © Chip Baker Films

「60年代のストーンズといえばブライアン・ジョーンズだ。ミック・ジャガーでもキース・リチャーズでもない」

「1960年代を切り開いた中心人物だった。音楽やファッション、そしてその言動でね」

 ブライアンが愛したのはアメリカの黒人音楽に源流を持つブルースだ。エルモア・ジェイムスのスライドギターをまねてプレイするのを見た人物はこう評する。