この証言は、同じく双極性障害と診断されている私の胸に響く。出口の見えない迷い道を彷徨っていたんだろう。寒々とした心象風景だったに違いない。
「世界で一番イカした俺のバンドを取られちまった…」
しかも、それは不当とは言えない。真っ当な流れだったから恨むこともできない。
死の前年、『ノー・エクスペクテーションズ』という曲の収録で、得意のスライドギターを披露する姿が映画で紹介される。ブライアン最後の輝きだった。
「当時の彼の状態を考えたら驚異的な演奏だよ。ろくに弾けないことのほうが多かったからね。あの夜、彼が弾いたソロは本当に見事だった」(フィル・ブラウン テープ・オペレーター)
あれは、ブライアンのバンドだったんだ
最後に一冊の本をご紹介したい。『ブリティッシュ・ロックへの旅』。作家でロック評論家の山川健一さんがまず取り上げたのがブライアン・ジョーンズだ。映画は多数の証言を組み合わせた複雑な構成となっているので、この本を読むと理解の一助になる。発売直後に手にした私は、26年たった今も最後の一節が忘れられない。
「ねえ、ブライアン。(中略)ぼくも、そしてみんなも、ちゃんと覚えているよ。あれは、あんたのバンドだったんだ。」
INTRODUCTION
稀代の世界的ロックバンド“ザ・ローリング・ストーンズ”の創始者で初代リーダー、ブライアン・ジョーンズ。僅か27歳で終えた彼の波乱に満ちた生涯、そして謎に満ちた死について関係者の証言をもとに紐解くドキュメンタリー。当時の映像記録と生前のブライアンをよく知る人物たちのインタビューで彼の生涯を追った。ブライアンの才能に対する絶賛の声とその裏側にあった悪評、未だ謎多き死の現場となったプール、そして彼が眠る墓。果たして彼の死は事故だったのか、それとも――。
STAFF&CAST
監督:ダニー・ガルシア/2020年/スペイン/98分/原題:Rolling Stone: Life and Death of Brian Jones/新宿K's cinemaほか全国順次公開中