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「惚れた男のために総額3億円を運んだ」売れないキャバ嬢だった“ルフィ強盗団の愛人”(27)は、なぜ特殊詐欺に加担し続けたのか

『「ルフィ」の子どもたち』より #4

genre : ライフ, 社会

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「千晶は決していじめられていたわけではないです。ただ親友と呼べるような友達はいなかったと思います。自分から心を開くタイプではないですから。同窓会をする段になっても、誰も連絡先を知らなかったですからね。それなら『まぁいいか』で終わっちゃうような存在です。ただ、なんというか……他人との壁は千晶自らが築いていたように思えます。他人に『これ以上私に構わないで』という空気を醸し出していた。それが彼女なりの処世術だったのかもしれないですけど……」

「寂しいな」柴田が中学時代につぶやいた“本音”

 柴田はクラスメイトともつかず離れずの距離を保つ子どもだったという。そこを離れても、傷つかない距離を本能的に見いだしていたのだろうか。それでもA子は、一度だけ柴田の本音を聞いたという。

「中学校時代、帰り道だったかな、その日たまたま千晶とふたりきりで帰っていて、お互い家が近づいて、バイバイしようとしたとき、千晶がふと『寂しいな』ってつぶやいたんです。いじめられてはなかったけど、友達の輪に入らないようにしている雰囲気があったし、普通の家庭じゃない、というのはみんな知ってたから。なんかその『寂しいな』というひと言に、いろんな意味があったように思えて……今でも覚えてるんですよ」

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 そもそも本音を語り合うほど特別に仲がよかったわけではないが、柴田がなぜ自分にこんなことをつぶやいたかは理解できなかった。

 しかし、「寂しいな」という消え入りそうな声が今も耳に残っているという。筆者はそんなA子に単刀直入に聞いた。「どうして事件を起こしたと思いますか」と。

柴田千晶被告

総額3億円の大金をスーツケースに入れて運んでいた

「逮捕されたと聞いたときは驚きました。少なくとも善悪の区別がつく子でしたし、決して不良でもありません。でも、もしかしたら誰かに信用されたり、確固たる自分の居場所がある、ということが心地よかったのかもしれないですね。今思うとですけど……少なくとも子供のころの彼女にとって、そういう場所はありませんでしたから」

 27歳の女が犯した罪の原点を、女の中学時代までしか知らないひとりの同級生が見立てるのは無理があるかもしれない。しかし、A子の言葉は柴田の取材を進めている筆者にとっては、ひとつの道標となった。

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