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失敗作であればあるほど会場が盛り上がる…冗談のつもりで始めた「ヘボコン」が世界で熱狂を生むまで

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genre : ライフ, ライフスタイル, 社会

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「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」という風変わりなイベントがある。2014年からイベントを主催している石川大樹さんは「ヘボコンは『技術力が低ければ低いほど価値が高い』というイベント。出場するロボットも隙だらけなので『これなら私も出場できる』と思ってくれる参加者が多く、いまでは世界25カ国以上で開催されている」という――。

ずぶの素人だけが参加できる「ヘボコン」

10年前からロボットバトルのイベントを主催している。

ロボットバトルと聞くと、巨大ロボが拳で殴り合ったり、ビームを撃ちあったりする光景を想像されるかもしれない……が、それとは180度真逆のイベントだ。まず想像の中のロボットを30cmほどに小さくし、見た目を小学生が作った牛乳パック工作に変えてみてほしい。そして戦場を駆け抜けながらビームを撃つ代わりに、ただ愚直に前進するだけ……と思いきや、原因不明の不具合でそれすらかなわず立ち往生している。それが私の主催するイベント、ヘボコンである。

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筆者提供 対戦の様子 - 筆者提供

ヘボコンは2014年にスタートし、今年で10年目になる。正式名称を「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」という。

元々はロボコンのパロディとして始まった。ロボコンは工学を学び専門知識を身につけた人々が、その技術の粋を結集して挑む。ヘボコンはロボット工学のロの字も知らないずぶの素人が、勘で作ってきた「自称・ロボット」を無理やり戦わせるイベントだ。

これが世界に広がり、(すべては把握していないが少なくとも)25カ国以上で開催され、南極以外の全大陸に上陸した。しかもただのエンタメとしてではなく、教育関係者からも広く注目を集めているのだ。そんなヘボコンの魅力はどこにあるのか、少し説明させてほしい。

技術のつたなさが生む魅力

ヘボコンの面白さはなんといっても、出てくるロボットが全部「よくできていない」ことにある。競技はロボット相撲のため転倒したり場外に出たら負けなのだが、出場するロボットたちはひとりでに倒れ、コントロール不能で勝手に場外に出ていく。