「参加者は全員、全裸で踊ってください」
2021年10月某日、私が在籍するオランダの大学の教員から受け取った、一般人参加型ダンスパフォーマンスの参加者募集メールの一文に私はひっくり返りそうになった。老若男女関係なく集った般人約30人と1週間以上にわたってリハーサルし、最終日には外部の客の前で裸になって踊るというのだ。
パフォーマンスの名前はHabitat(ハビタット)で、講師はオーストリア出身のアーティスト、ドリス・ウーリッヒ氏。好奇心旺盛だと自負している私でも、さすがに人前で全裸になって踊る勇気はない。
私は2018年9月にオランダの大学に入学し、それから約4年間、オランダで学生生活を過ごしてきた。この国の“裸観”は日本人の私にとってはかなり謎めいている。オランダのスパは全裸で混浴の施設も多いし、ヌーディストビーチも人気だ。しかも一般人が全裸で観客の前で踊るのもアリ……。彼らにとって、裸って一体なんなのだろう、とまたしても謎が深まってしまった。
だから、冗談のつもりでオランダに住む同郷の知人にこの招待メールを転送した。「これは参加できないよね(笑)」なんて共感し合うつもりだったのだが、後日、彼女から衝撃的な報告を受けたのだ。
「私、このパフォーマンスに参加してみる」
彼女は一体、どんな体験をしたのか――。Akariさん(20代)に話を聞いた。
◆◆◆
「マスクもつけず全裸でダンス」に抵抗は?
――私が招待メールを転送しておいてなんですが、そもそも、なぜ参加しようと思ったのですか?
Akariさん(以下、敬称略) 単純に面白そうだったからですね。裸だ!裸だ!とはあんまり考えていませんでした。ジェンダーとかセクシュアリティについて興味を持っていたのも大きいかな。
――ただ、オランダは日本よりも裸に寛容なところがありますが、みんながみんな人前で服を脱ぐことに寛容なわけではないですよね。
Akari あまり前向きな反応はなかったですね(苦笑)。「男のコと一緒に裸でダンスするなんて…….オーマイガー!」ってニヤニヤした感じで言われたり、「イイ体した、カッコいい男のコいた?」って聞かれたり。
――裸で、もちろんマスクもつけませんよね。コロナ禍で「濃厚接触」なパフォーマンスに参加することに抵抗はなかった?
Akari 参加者はワクチン接種とリハーサル前に陰性証明の提示の両方が必要だったから、感染対策はしっかりされていたので安心はできました。私自身、毎回のリハーサル3時間ぐらい前に、無料で検査してくれるテストセンターに駆け込んでちゃんと検査してもらっていましたし。