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《ヘアヌード解禁から30周年》3万2000年前に刻み込まれた洞窟壁画 “黒い逆三角形”の正体は…

『ヘアヌードの誕生 芸術と猥褻のはざまで陰毛は揺れる』より#1

2021/08/07

 2021年は「ヘアヌード解禁」から30年。かつて日本では陰毛が「ご法度」扱いされた時代があった――。なぜ“下腹部に生えた体毛”は、ことさらに「猥褻」とされたのか?

 アダルトメディアの歴史を研究するライターの安田理央氏は、その理由を探るため、美術もポルノもひっくるめた「陰毛表現の歴史」を3万2000年前までさかのぼり、徹底的に調べ上げた。ここでは『ヘアヌードの誕生 芸術と猥褻のはざまで陰毛は揺れる』(イースト・プレス)より一部抜粋して紹介する。(全2回の1回目/#2に続く

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3万年前のヘアヌード

 古代ギリシャ以前の文明、そして他の地域の文明では状況は違っていた。
 
 まず女性器を描いたものでは世界最古とされるショーヴェ洞窟の壁画を見てみよう。南フランスのカルスト谷の側壁にあるショーヴェ洞窟は1994年に発見され、その内部には3万2千年前に描かれたという数百点の壁画がある。

©iStock.com

 その最深部の「奥の部屋」の天井から垂れ下がっている石灰石の錐体に描かれているのはバイソンとライオン、そしてその中央に黒い三角形があり、それが女性の下半身だといわれているのだ。バイソンに抱かれる女性の下半身とも、半人半獣とも解釈されているが、この世界最古と思われる「裸婦画」には、しっかり陰毛が描かれているという点に注目したい。いや、陰毛しか描かれていないといってもいい。この絵においては、女性=陰毛なのである。

 またオーストリアのヴィレンドルフで発見された約2万9千年前の後期旧石器時代のものと思われる女性像は乳房と腹、そして尻が極端に肥大しており、性器と思われる裂け目もはっきりと彫り込まれていた。その一方で顔も手も無く、いわば生殖に関する女性の特徴のみを表したような像となっている。

 他の地方で発掘された旧石器時代の女性像も、すべてこのような特徴を持っており、いずれも裸である。