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 これは子供を産むという女性の機能への敬意や畏怖から、繁殖に対する祈りが像に込められていると考えられる。

女性像の下腹部には逆三角形が

 旧石器時代から、後の時代の女性像にも受け継がれている表現手法として、逆三角形のシンボルがある。ほとんどの女性像の下腹部には逆三角形が刻み込まれているのだ。中には他の身体的パーツは省略され、まるで逆三角形のみの存在のような造形の像まである。

ショーヴェ洞窟の壁画に描かれた「黒い逆三角形」 ©Science Photo Libraryアフロ

 紀元前2500年頃に使われていたというシュメール文字においても女性の性器は逆三角形で示されたし、その後のインドやオリエント地方、南部ヨーロッパなどでも同じように使われている。

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 ショーヴェ洞窟の女性画を思い起こすまでもなく、逆三角形は陰毛の生えた女性の下腹部を表している。その部分に多くの点を打って逆三角形を描いているものもあり、これなどは明らかに陰毛そのものだ。

 豊穣多産への祈りが根本にあった女性像だが、時代が進み古代ギリシャ文化に至った時、それは切り離されてしまった。

裸体の表現は受難の時代へ

 そして女性の聖なる「逆三角形」は隠すべき恥ずかしい場所となった。

 その部分は手や布で隠されるか、もしくは何もないツルツルの状態で表現されることとなった。

 公の場で、乳房や尻を見せることは許されても、その部分だけは許されない。

 なぜならば、そこは猥褻だからだ。

 この概念はこの後も長く西洋美術を縛り続けることとなる。

 ローマ文化が衰退し、キリスト教が支配する中世を迎えると、裸体を表現する美術は受難の時代へと突入する。