イラストレーターの安齋肇氏とエディターの渡辺祐氏の対談「タモリ倶楽部 40年を語ろう」(「文藝春秋」2023年5月号)を一部転載します。
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『タモリ倶楽部』にしか出ていない謎の人物
3月末に惜しまれつつ終了した『タモリ倶楽部』。「空耳アワー」のコーナーで長年タモリさんの横で笑い続けてきた安齋肇さんと、番組の進行役としておなじみだった渡辺祐さんが、40年続いた番組の思い出を語り合った。
渡辺 『タモリ倶楽部』の台本を何冊か持ってきたんですよ。
安齋 わー、たくさんあるね。
渡辺 手元にあった古い台本だと、昭和61年12月27日(土)収録と書いてあります。
安齋 37年前。何のきっかけで番組に出ることになったの?
渡辺 当時、『タモリ倶楽部』の構成作家を景山民夫さんと加藤芳一さんが担当されていて、私はこのお二人とご縁があったんですよ。で、「食えなさそうなフリーの編集者がいるから、面白いから出しちゃえ」みたいな、わりと軽い感じで呼んでもらった気がします。
安齋 「深夜の雑誌的な番組」と言われていた『タモリ倶楽部』に本当の編集者が呼ばれたと。
渡辺 で、呼ばれてちょこちょこ出演しているうちに、いわゆる「回し役」を任されるようになったんです。冒頭で「いやいやいや、タモリさん、聞いてくださいよ」って入っていく役(笑)。
安齋 いいねぇ。もう、ほとんど芸人の域だね。
渡辺 でも、芸人さんとは違ってうまくならない(笑)。『タモリ倶楽部』にしか出ていない謎の人物。編集者では、山田五郎さんもよく出ていましたね。
安齋 そうだ、しかもあの人は大手出版社の編集長だったからね。僕は、編集者じゃなくて変質者として呼ばれた(笑)。