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“講談界の超新星”神田松之丞が語った「芸人が終わるとき」

テレビっ子講談師・神田松之丞インタビュー #2

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有吉さんまだ“現役”なんですよ

―― 特にテレビではワイドショーにキャスティングされることが当たり前になって来ましたよね。

松之丞 大人の事情が多分にあるところだと思いますが、事務所の方針で強引に出演していくのはどうかなって思いますね。芸人が政治語り出したら、“現役”じゃないんだなって。思想はおのおのあっていいと思うんですけど、真面目に語られるのは、なんか嫌ですね。どちらの党を応援しているのかとかみえると最悪で。個別の問題に是々非々なら、まだ何とか、まぁ仕事だからと思うところもありますが。笑いもなしに、ツイッターとかで言っている芸人は、もう怖いとすら思います。もっとも実際にそういう人に会うと、みんな良い人なんですけど(笑)。

 

―― 芸人が語るというか、論じてしまうことで消えてしまう世界があるわけですよね。

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松之丞 芸人の正論なんか聞きたくないんだもん。そもそも正論を言う職業じゃないし。「俺らわかんないです」って言ってればいいと僕は思うんです。そこは有吉さんとかは一線を守ってるんじゃないですか。だからそういう意味でいうと、有吉さんまだ“現役”なんですよ。

『サンジャポ』の居心地と立ち位置は……

―― 爆笑問題さんは、漫才で時事問題を扱っていますが、そういうのはどう思われるんですか。

松之丞 ネタとして板の上でやるのはいいんですよ。でも、真面目に語り出すとツラさが出てきてしまうものだと思います……。うーん、そういえば、今、偉そうに芸人は政治について語るな、そんな番組出るなと言ってましたけど、考えたら私も『サンデージャポン』出てましたね。ブーメラン眉間に突き刺さってました(笑)。

 

―― まさに松之丞さんは『サンデージャポン』のコメンテーターでもご出演されてますが、あの席はどんな居心地なんですか。

松之丞 ただ、僕はスタッフさんに言ったんです。「政治について一切喋る気ないです。それで良ければ出ます」と。そのスタンスでお願いしたので、コメントを求められるのは、イノシシが暴れたけど死傷者は一人もいません、という類のニュース(笑)。その着物着て大の大人が言うことじゃないだろうっていうツッコミを待ってる感じですよね。個性的な面々がいっぱい座っている中で、自己主張をうまくしながらいかに政治の問題を避けるか、それがあの番組での、個人的なテーマですよね。微妙な中道のグレーなところを、芸人としてうまくいければなぁと思います。

 

#1 衝撃の講談師・神田松之丞が語る「“あの番組”で笑いを取りに行かなかった理由」
http://bunshun.jp/articles/-/8223

#3 「情熱大陸出るんなら、近い将来でしょうね」“生意気な”講談師・神田松之丞の「野望」
http://bunshun.jp/articles/-/8225

写真=鈴木七絵/文藝春秋

かんだ・まつのじょう/1983年生まれ、東京都豊島区出身。日本講談協会、落語芸術協会所属。2007年、三代目神田松鯉に入門。2012年、二ツ目昇進。2015年、「読売杯争奪 激突! 二ツ目バトル」優勝。趣味は落語を聴くこと。著書に『絶滅危惧職、講談師を生きる』(聞き手・杉江松恋)、新刊に『神田松之丞 講談入門』

“講談界の超新星”神田松之丞が語った「芸人が終わるとき」

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