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かりっと「春菊天」もふわっと「げそ天」もたまらない。小伝馬町「田そば」の独学ぶりに3度驚く

あまりにも美味しくて「冷やしまいたけ天そば」も追加

2018/08/21

genre : ライフ, グルメ

note

 天ぷら、つゆ、そばの三位一体感、バランスがよいそばはうまいと思う。そういう意味で、今、すこぶる旨いと話題になっている立ち食いそば屋が小伝馬町にある。「田そば」である。酷暑も終わりを告げようとしていた8月第3週の金曜日、さっそく訪問してみた。

青空がよく似合う原色系の外観

 地下鉄4番出口の階段を上がってすぐのところに「田そば」はあった。外観はなんとなく原色系。片岡義男さんの昔の文庫本の表紙イラストのような色調だ。青空がよく似合っている。

小伝馬町「田そば」は原色系の外観

 まだ午前10時過ぎだったので、先客1名。冷房もしっかり効いていた。清潔な店内、高い天井となんとなく落ち着いた雰囲気である。

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 店主の坂本さんはちょうど昼の天ぷらを揚げている最中。挨拶し「天ぷらそば」(420円)のチケットを買い、春菊天を口頭で選択した。注文後、生そばを茹で始めた。

きれいに揚がった天ぷらたち
清潔な店内といつも元気な店主の坂本さん

 店主に店名の由来を聞いたところ、面白い回答が返ってきた。開店当初、友人の田川君に手伝ってもらい店を始めたそうで、その田川君の「田」をとって命名したという。友達思いの店主というわけである。でも、田川君は辞めてしまって、店名に「田」が残ったというわけだ。

本格的な出汁の香りがぐいぐい立ち上がる

 そんな話をしながら天ぷらをみていたら「げそ天」も食べたくなったので、「春菊天そばげそ天のせ」(540円)に変更した。

 さっそくつゆをひと口。すると本格的な出汁の香りがぐいぐい立ち上がった。出汁には本枯鰹節・鯖節・宗田節を使用しているという。すべてをまとめる最良のつゆである。

「春菊天そばげそ天のせ」(540円)
げそ天もぷりっぷりふっくら

図書館の本から出汁&返しの作り方を学ぶ

 この出汁のとり方や返しの作り方はどこで学んだのか聞くと、これまた意外な回答が返ってきた。他店で修業したことは一切ないという。しかも、その習得方法がユニーク。自宅からすぐのところに図書館があり、そこに老舗「薮そば」の返し・出汁の作り方の本があったそうである。それを読んでメモ。それを基に試行錯誤して作ったというのだ。つまり、「田そば」のつゆは老舗「藪そば」の味に近いということになる。

 お店を始める前に、都内の有名立ち食いそば屋にもずいぶん食べに行ったそうだ。中でもつゆがうまいと思った店は三越前の「そばよし」で、相当味の参考にしたそうである。