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連載尾木のママで

30分間1ミリも動かない モンゴルの交通渋滞がすごい――尾木ママ語る

尾木のママで

2018/10/25
イラスト 中村紋子
イラスト 中村紋子

 この十月、縁あってJICA(国際協力機構)の教育・福祉に関するプロジェクトの視察でモンゴルを約一週間訪問した。モンゴルは旧ソ連に次いで当時、世界で二番目の社会主義国家になった国。四半世紀前に社会主義を放棄し、自由主義圏入りを目指し発展の途上。課題と援助のあり方を探るべくかの地に発った。

 首都ウランバートルのチンギスハーン国際空港から一歩出ると、氷点下の寒さ! 滞在中、日中の十度が暖かく感じるくらい。マイナス九度の朝は体の芯から凍えたわ。

 次に驚いたのは都心の日常的な交通渋滞。目的地はすぐそこ徒歩五分なのに、三十分間一ミリも車が動かない! 二車線に四列ほど車がたち込み、車間距離は二〜三センチ。ドライバーはみな曲芸なみのテクで、スキマが出来るとすかさず割り込んでくる。人間も道路を縦横無尽に歩き回る。「交通ルールを守る」という社会的認識も薄いみたい(笑)。

 遊牧民の移動式住居「ゲル」も訪問した。おもてなしで出された馬乳酒の酸っぱかったこと! 厳寒の中、雄大な土地に馬やヤギなど多数の家畜を放牧しつつ折々住まいを移し、八畳ほどのゲルで家族四人身を寄せて暮らす。寡黙なお父さんに“ゲルの生活の良さと困難さは?”と尋ねると一言、「幸せです」ですって。

 そう、モンゴルの人ってとっても大らか! 良くも悪くも他人に興味が薄い(笑)。ケンカも激しくやりあった後は、スッキリ元通り。「いじめ」がほとんどないというのも納得。また、社会主義の名残で「男女平等」が社会全体に行き渡っていて、女性が実にたくましくのびのび生活している。

 貧富の差も大きく、経済も教育も課題山積のモンゴル。でも、キリキリもせず、「困難はあるけど皆で国をつくっていこう」という大陸的大らかさが社会全体に満ち、心地よかった。日本も学ぶところが多そうよ。(次号に続く)