父はイケメン元大関、伯父は元横綱、母は元女優、息子ふたりは横綱、兄嫁は元スッチー、弟嫁は元女子アナ。「絶頂の一族」とは、松田賢弥が安倍晋三とその家系を書いた評伝のタイトルであるが、往時の「花田家」にもその趣があった。
そのような栄華を誇った相撲一家も先月、貴乃花親方が日本相撲協会に年寄の引退届を出したことで、ついに相撲界との縁が切れることになる。貴乃花は弟子の貴ノ岩への暴行事件に関して、内閣府に告発状を提出していたが、そうしたことが協会を混乱させたとして他の親方衆から2時間に及ぶ吊し上げをくらうなどしていた(注1)。大横綱がいつしか厄介者になり、相撲界の居場所を失ってしまったのである。
「角界一大叙事詩」とも言うべき家族物語
平成のはじめ、世の中は秋篠宮、そして皇太子のご成婚に沸いた。《当時学習院大学の教職員用の共同住宅で暮らしていたことから「3LDKのプリンセス」と親しまれた》(注2)秋篠宮妃紀子様と、米国ハーバード大学から東大法学部、外務省とキャリアを積んだ皇太子妃雅子様の、その住まいや経歴、ご学友から飼い犬にいたるまでが芸能ニュースとなる。
こうしたロイヤルファミリーへの熱狂に劣ることなく、ワイドショーや大衆の興味を惹き寄せていたのが花田家である。
“角界のプリンス”と呼ばれながらも大関止まりだった父、その夢を叶えようと相撲界に入る息子たち、そんなふたりの兄弟愛、そこに宮沢りえとの恋物語があり、兄弟での優勝決定戦、そして史上初の兄弟横綱の誕生……角界一大叙事詩である。さらにおかみさんの憲子と嫁の美恵子・景子の女たちの物語がそこにくわわる。とりわけ大相撲サンノゼ・ハワイ公演の際の、『Olive』の元モデルでJALの客室乗務員と若乃花との出会いは、当時の流行り言葉でいえば「トレンディ」でさえあった。