タイの洞窟に取り残された少年たちを救うため、日本からも国際協力機構(JICA)の排水の専門家が派遣され話題になったが、JICAの支援は技術分野だけではない。
6月に出版された『世界を変える日本式「法づくり」――途上国とともに歩む法整備支援』(文藝春秋企画出版部)は、約20年前にベトナムで始まったJICAの法整備支援の足跡をまとめた“証言録”だ。
「僕は法づくりの専門家で、本づくりは門外漢なんですが(笑)、非常に勉強になりました」
編集に携わったJICAの法整備分野のアドバイザーで弁護士の枝川充志さんは、長期専門家としてこの4月からベトナムに赴任している。
「ベトナムの法律や運用実態を把握しつつ、法・司法制度の改善を一緒に考えていくのは奥が深い作業です。これは価値の押しつけでは根づきません。長い時間をかけ、信頼関係を築いて取り組んでいくものです」
とはいえ、急速な経済発展の渦中にあるアジア諸国にとって、投資環境整備などのニーズに応えつつ、自国の人々の権利・利益を保護する法・司法制度の整備は焦眉の急。赴任して3カ月の枝川さんも、40度を越す熱波の中、民事法整備や、ベトナム弁護士連合会の組織強化の活動に飛び回る毎日だ。