2017年もまた、アフリカは混乱と希望が入り混じった1年になりました。“最後のフロンティア”と呼ばれて久しいアフリカは、この先どこへ向かうのでしょうか。ここでは、(1)政治・安全保障、(2)経済、(3)日本との関係の3項目にわけて、アフリカ情勢の展望を解説していきます。
(1)不安要素はテロとリーダーシップ不在
この1年間、IS(イスラム国)がイラクとシリアで相次いで軍事的打撃を受けました。これを受けて、イラクのアバーディ首相は、「ISを一掃して、全土を解放した」と戦争終結を宣言しました。中東ではテロの脅威は低減されたのではないかと思いますが、一方ではアフリカにおけるイスラム過激派(グローバル・ジハーディスト)の脅威は、今後むしろ高まるのではないかと考えられます。
理由は2つあります。1つは、イラクとシリアから放逐されたISの外国人戦闘員の出身国を調べると、北アフリカ及び西アフリカ諸国がとても多いこと。国でいえば、チュニジア、リビア、アルジェリア、ニジェール、モーリタニアなど、サハラ砂漠周辺の地域です。彼らの多くは祖国へ帰還することが予想されます。なかにはテロ組織へのコミットをやめる人もいるでしょうが、継続するのであれば、活動フィールドは母国とその周辺になるのです。
もう1つの理由は、ここ数年で始まった短期間のトレンドではありませんが、アフリカ諸国は近代国家として未成熟な部分が多く、ガバナンスが脆弱であることです。具体的には、国境管理、そして軍や警察などのオペレーションの執行能力に問題が散見されます。場合によっては、軍隊や治安当局の幹部が敵対勢力から買収されてしまうようなケースまである。そういう状況では、テロリストが容易に国境を越えて移動して、各国でテロ行為を繰り返してしまうのです。
また、現在のアフリカには、政治的にも経済的にも強いリーダーシップを発揮できる国や指導者がいなくなってしまっています。2002年ぐらいから10年以上にわたって、政治も文化も宗教も異なる54カ国が「アフリカ」として一つにまとまっていこうという機運が感じられましたが、当面は統合へと向かうムーブメントは萎んでしまうでしょう。
最近ではジンバブエのムガベ大統領が辞任しました。彼はアフリカ全体のリーダーというわけではありませんが、独立運動を経て1980年から首相の座に就いていたのです。したがって、長期政権を率いてきた立場からの発言力がありました。
アフリカの地域大国としては、経済力を背景に持つ南アフリカとナイジェリアが挙げられますが、両国とも政治は混乱している状況です。ナイジェリアのブハリ大統領は現在75歳。健康問題を抱えており、次回2019年の大統領選への出馬は絶望視されています。しかも、原油価格の低迷にともなってナイジェリア経済も苦しんでおり、強いリーダーシップを発揮できる状況にはとてもない。