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(3)少子高齢化の日本だからこそ、アフリカにビジネスチャンスがある

 中国の影響力増大と反比例するように、日本は国連において加盟国の4分の1以上を占める票田、アフリカ54カ国との関係に苦慮しています。広いアフリカ大陸に日本人は8000人しかいませんが、驚くことに中国人は、あくまで推計値にすぎませんが約110万人も進出しているのです。外国人がほぼ撤退していた内戦中のソマリアで、通信会社に勤める中国人技師と出くわしたこともあります。

 日本政府は、アフリカ各国の首脳と日本の総理大臣が出席するアフリカ開発会議(TICAD)を1993年から開催しています。最初は5年に1度でしたが、2013年からは3年に1度になり、2016年には初めてアフリカ(ケニアの首都・ナイロビ)で行われました。ここで安倍首相は「日本企業は、アフリカ全体に3年間で3兆円の投資をします」と宣言しました。しかし、残念ながらこの達成は厳しい状況にあると言わざるを得ません。

TICADに出席した安倍首相 ©Getty

 というのも、日本企業がアフリカはもとより、世界に打って出ていく体力を失っているからです。原発ビジネスは、3.11以降はとても外国に売れる状態ではない。家電メーカーも経営状況が厳しく、中韓相手には競争できないのは周知の通りです。通信も、保険・金融もガラパゴス状態です。世界で競争力を持っている日本製品は、自動車、半導体、工作機械など限られたものしかない状態です。

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 とはいえ、日本企業にもビジネスチャンスはあります。日本は少子高齢化社会に突入し国内の消費性向も変わってきているので、日本の国内需要に依存していたのでは立ち行かない企業が増えてきています。そうした状況を打開するためにアフリカに真っ先に進出した日本企業に味の素があります。私が子どものころは、家庭ではどんな料理にも味の素をかけていましたが、日本人の生活が裕福になるにつれて、食卓で味の素を目にする機会は減りました。味の素は、味覚のバラエティが少ない発展途上国に大きなニーズがある商品なのです。このほかにも、例えば日清食品はケニアでインスタントラーメンを作っています。

 また、日本では空き家が増えていることが盛んに報道されていますが、アフリカでは人口が増加しているので家も増える。そこで、ペンキを製造している関西ペイントはアフリカに進出しています。

 人口が増え、胃袋が増え、さらに所得水準が上がることで新たなニーズが生まれてくる。アフリカのマーケットには、現代の日本社会にはない特性があります。今後は、医薬品や紙おむつ、トイレットペーパーなども需要が増してくるでしょう。国内市場が縮小している分野ほど、逆に言えばアフリカで勝負すべきなのです。

アフリカでは人口増加が続いている ©iStock.com

 その点、心配なのはテロも含めた治安面です。2013年にアルジェリアの天然ガスプラントで、日本人10人を含む約40人が亡くなったテロ事件がありました。邦人が多数巻き込まれる事件がひとたび起きれば、企業のアフリカ進出に一気に冷や水となってしまいますので、日本も何らかのかたちでアフリカの安全保障にコミットすることが必要ではないかと思われます。