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 一方、南アフリカでは、12月18日に与党・アフリカ民族会議(ANC)の党首としてラマポーザ副大統領を選出しました。もう一人の有力候補は、ズマ大統領の元妻で、なぜか離婚後も仲が良いドラミニ・ズマでした。南アフリカの大統領は日本の首相選出の仕組みと同じように議会(下院)の投票で選出されるので、2019年4月に予定されている総選挙でANCが過半数を獲得すれば、ラマポーザが次期大統領になるでしょう。

 ラマポーザは1990年代初頭のアパルトヘイト廃止過程で、ネルソン・マンデラの右腕として白人政権との交渉を仕切り、その後はビジネスで大成功を収めた優秀な人物です。ズマ大統領は政治腐敗と縁故主義を蔓延させ、国際社会における南アの地位を著しく損ねてきたので、自国の現状に強い危機感を抱くANC内の人々が「改革の切り札」としてラマポーザを支持したのだと思います。

かつてはマンデラ大統領の右腕だったラマポーザ氏 ©Getty

 ラマポーザは新党首に選出されたのち、早速汚職に厳しい態度で臨む考えを示しており、南アが倫理面での指導的地域大国として存在感を強めていくことが予想されます。ただし、低迷する南ア経済の再生は、ラマポーザにとっても容易ではないでしょう。南ア経済は事実上ゼロ成長状態であり、失業率も恒常的に25%前後の高率にあるからです。

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(2)資源価格の低迷で急務になっている産業の多角化

 本来ならば、経済成長が政治の安定性を底支えするものですが、サブサハラ・アフリカ(サハラ以南49カ国)の経済は、資源輸出国を中心に停滞しています。2003~2012年の10年間、アフリカ諸国は平均すると年間6%近い経済成長を遂げてきました。ところが、2017年はおそらく2%台で終わってしまう。国際通貨基金(IMF)の「リージョナル・エコノミック・アウトルック」の最新版(2017年10月版)を見ると、2017年予想値が2.6~2.7%になっています。2018年も良くて3%を超えるかどうか……。

 日本人の感覚からすると「3%も成長すれば万々歳だ」と思えますが、前提が大きく異なっているのです。日本の人口は減っていますが、アフリカの人口は年間2.7%前後で増加しています。つまり、日本は経済成長率0%でも1人あたりのGDPは増えますが、アフリカでは常に2.7%以上の成長を続けなければ1人あたりの所得は増えない。

 そもそも、21世紀に入ってからのアフリカの急成長は、石油や鉄鉱石などの資源価格の高騰による恩恵を最大限に受けたものでした。典型的なのはナイジェリア。産油国ではアンゴラやガボン。これらの国では、成長にブレーキがかかっています。一方、アフリカの中でも資源輸出に依存していないケニア、エチオピア、コートジボワール、タンザニアなどは、低くても5%台、高い場合は10%近いGDP成長率を記録し続けており、堅調な経済成長を続けています。

ナイジェリア・ラゴスの石油リグ ©iStock.com

 今後、アフリカ諸国に求められるのは産業の多角化ですが、結果的に中国の影響力がますます強まっていくことが予想されます。というのも、アフリカ側のニーズは製造業、農業生産性の向上への投資と援助にあり、中国はこうしたアフリカ側のニーズに応える姿勢を鮮明にしているからです。中国の支援によってアフリカの人々の購買力は上がり、アフリカはこれまで以上に中国製品の有力な輸出先になっていくでしょう。

「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ大統領のもと、アメリカが世界に関する関心を失っているという現実もあります。最近のアメリカは、きわめて近視眼的な稼ぎにしか興味がないので、アフリカ経済をボトムアップしようという発想はほとんどない。ますます中国の影響力が増す一因となっています。