テクノ・リバタリアンと結託したトランプ政権下では、“暗号通貨バブル”のリスクが生じていると評論家の中野剛志氏は指摘する。そこで問題となるのが、暗号通貨の基本設計に潜んでいる、ある致命的な欠点だという。

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暗号通貨のバブルとは?

 2008年の世界金融危機は、住宅バブルが引き金となった。これに対して、テクノ・リバタリアニズムが引き起こすバブルは、テック関連となる可能性が高い。すでに、AIバブルの可能性が指摘されているが、もう一つ考えられるのは暗号通貨のバブルである。

 そもそも暗号通貨とは、何か。その何が問題なのか。代表的な暗号通貨であるビットコインを例にとりつつ、改めて確認しておこう。

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 ビットコインは、ブロックチェーンという分散型コンピューターネットワーク上にある暗号化されたデータである。ビットコインは、「マイニング」と呼ばれる数理的処理を行うと、その報酬として得ることができる仕組みになっている。ただし、マイニングは非常に難解な数理的処理であるため、誰でも容易にできるわけではない。このため、ビットコインの購入希望者は、通常は、取引所を利用することになる。

トランプ政権の「政府効率化省(DOGE)」の名称は、イーロン・マスクが支持する暗号通貨の「DOGE」に由来する ©NurPhoto via AFP

 ただし、ビットコインは、2100万BTC(「BTC」は、ビットコインの単位)までという発行上限が定められており、また、発行量が増えるほど、マイニングが難しくなるように設計されている。こうすることで、ビットコインは、その稀少性を担保している。そして、この稀少性こそが、ビットコインの価値の源泉となっているのである。

 このビットコインの基本設計は、「商品貨幣論」と呼ばれる貨幣観をベースとしている。

 金銀などの貴金属はその採掘量には限りがあるため、稀少である。その稀少性ゆえに、貴金属には高い価値が認められる。その価値ある貴金属でできているから、金貨や銀貨には価値が認められ、貨幣として流通する。そう考えるのが「商品貨幣論」である。

 この場合の貴金属の採掘に該当するのが、ビットコインにおけるマイニングである。したがって、ビットコインとは、まさに金貨や銀貨の電子版だと言ってよい。

トランプ大統領(左)がマスク氏をはじめとするテクノ・リバタリアンと結託したことで暗号通貨バブルのリスクが生じていると中野氏は言う ©時事通信社

 もっとも、通貨は、国家などの政治権力がその発行権を独占している。これに対して、暗号通貨は、国家権力が独占的に発行するものではない。だから、テクノ・リバタリアンたちは、国家権力から解き放たれた通貨として、暗号通貨に大きな期待を寄せたのである。

 しかし、暗号通貨の基本設計には、通貨として機能するには致命的な欠陥があった。