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人を信じ、戦いを諦めない…ベイスターズ・三浦大輔監督が目指す野球を考える

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/04/16
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大貫晋一投手のもう1イニング

 3対0リードの6回の攻撃。ツーアウト三塁で大貫投手に打順が回った際、三浦監督はそのまま打席に立たせ7回のマウンドに送りました。実は6回の攻撃を実況する前のCM間、この日放送席解説だった野村弘樹さんから「もしも次の回大貫投手に打順が回って代打を出されたら、言っておきたいことがあります。」と打診されていました。

 実際には打席に立つ大貫投手を見た野村さんは大きくうなずき「これで良いのです。去年まででしたら、6回を投げ打席が回ったら交代でした。でも6回4安打無失点の大貫投手があと1イニング頑張ることで、継投の仕方も含めチームにもたらすものは大きい。」と解説。7回のマウンドでは塩見選手にソロホームランを浴びた大貫投手でしたが自身も「あの時、監督から託されたもう1イニングはチームに貢献するためにこだわってきた部分だし、自分にとっても大きい。」と振り返ってくれました。去年規定投球回に6回1/3足りなかった事実、何よりチームの柱になる思いは大貫投手の意識を高めています。

横浜スタジアム、大貫投手が描かれた入口 ©吉井祥博

 思いに応え開幕投手に指名した濵口投手が無念の降板をした後三浦監督は「経験はあの場に立たないと積めないこと。忘れずにやり返して欲しい。」と伝えています。今シーズンのチーム初勝利を自らのプロ初勝利でもたらした阪口投手は「濵口さんは背負っているものが違う。自分もチームに貢献しないと。」と濵口投手の背中を糧にしていました。

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 今は課題かもしれませんが、やがて三浦監督の現役時代の様に「任された試合は責任を持って投げ切る」投手の柱は育っていく空気を感じます。

お互いの信頼と結束がチーム力をもたらす

 本拠地初戦は4対1とリードした8回石田投手を投入。そのあと山﨑投手へと繋ぎましたが、結果逆転を許しました。良いボールを投げながらも失点が続いてしまう流れに苦しんでいた石田投手を、三浦監督は信頼する投手だからこそ「やられたらやり返して欲しい」という思いで送り出しています。

「やられたらやり返す」という言葉は1998年優勝を果たした権藤博監督時代、よく耳にしました。選手たちは指揮官が信頼して選んだメンバー。一度悔しい思いをしてももう一度、それでもだめなら次。三度のチャンスを与えられる中で、信じて送り出された選手は爽快な結果を残していました。

 チームが強かった時も苦しかった時も知り尽くした三浦監督はお互いの信頼と結束が、チーム力をもたらすと誰よりも感じているはず。

 だからこそスローガンは“横浜一心”です。

 現在ベイスターズのチームサポートリーダーとして試合の分析に加え打撃投手としても多忙な毎日を送る三橋直樹さんが入団した当時の2006年「三浦さんがすごいのは、仮に立ち上がりが悪く失点しても最善を尽くすこと。1回に3失点したら3点で我慢し、決して諦めない。」と話してくれました。チームの主砲だった村田修一さん(現在ジャイアンツ野手総合コーチ)は「あの三浦さんの背中から、若い投手は学んで欲しい。たとえ打たれても戦う姿勢を崩さない。」とインタビューに答えてくれたことがありました。

 今の苦境は三浦監督が現役時代に先発した試合に例えるなら、あまり得意としていなかった立ち上がり。

 三浦監督が人を信じ諦めない戦いを続けるなら、私たちも日々の戦いの中に大切に織り込まれた三浦監督の野球を、心を込めて伝えたいと思っています。

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