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なぜ武蔵小杉のタワーマンションは「巨大さ」を売りにしているのか?

「シンプル」「ミニマル」傾向に逆行する理由

2019/05/20

「都心だけでは、ものたりない人々へ」

 これに加え、以下の威勢の良いポエムをご覧いただきたい。

三井不動産レジデンシャル「パークシティ武蔵小杉 ザ ガーデン」ウェブサイトより

 どことなくデイヴィッド・ホックニー風のイラストも気になるこのポエム。90年代までは、いかにも川崎市といった趣の、特に注目されるような街ではなかった武蔵小杉だが、いまや住みたい街ランキングでも上位にランクインする人気っぷり。他の南武線沿線のマンションが「渋谷まで○○分」あるいは「横浜を庭にする」など、大都市へのアクセスの良さをウリにする中、このポエムはつまり、東京にも横浜にも頼らないぞ、と言っているのだ。

横浜市の夜景 ©iStock.com

 マンションポエムの2大要素、都市と自然を兼ね備え、東京にも横浜にもおもねらない。もしかして武蔵小杉は独立しようとしているのではないか。そういえば『ルポ 川崎』の著者である磯部涼さんはインタビューで、同書の営業を武蔵小杉の書店で行ったところ「うちは“川崎”じゃないんで」と言われた、というエピソードを語っていた(講談社・現代ビジネス「『ここは、地獄か?』川崎の不良社会と社会問題の中で生きる人々」  )。

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 元工場の敷地にたくさんのタワーマンションとモール、そして「自然」たる緑地をつくった武蔵小杉。だんだんこの街が宇宙コロニーに見えてくる。その住人たちはさしずめニュータイプだ。(初出「アットホーム」ウェブサイト)

武蔵小杉を宇宙コロニーに見立てたマンションポエム画像を作製してみました。いざ作ってみると難しいですねえ ©大山顕

立体交差/ジャンクション

大山 顕

本の雑誌社

2019年2月14日 発売

なぜ武蔵小杉のタワーマンションは「巨大さ」を売りにしているのか?

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