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「何気ない日々」の表現が掬い上げるものとは

 爽やかな色合いで描かれた、漫画的なコマ割りを持つ作品群は、今日マチ子によるもの。ブログに1日1ページ描き継いできた『センネン画報』を掲げているのだ。五所純子は、日めくりカレンダーの1枚ずつに、コラージュと日記を書きつけ続けた。その一部を並べた展示は、遠目に見ると統一感のあるデザイン性に魅せられ、近づくと書き直しも多数のリアルな日記の内容に惹きつけられる。手書きで何かを残すことの貴重さを思い知らされる。

日めくりカレンダーを用いた五所純子の作品

 渡邉良重のインスタレーションは、大切な人からのもらいものや、気に入ってみずから買い求めたものを素材にして、それらを注意深くていねいに並べることで美しい光景を現出させている。

渡邉良重のインスタレーション

 日ごろタレントとして活動する光浦靖子の作品もある。趣味でつくり続けてきたブローチの群れ。「ブローチは結界なんです。あの丸の中くらい自由にさせてほしいんだ」とは本人の弁。常に人の目に晒される立場にいるゆえ、極私的でささやかな作品世界だけはだれの影響も受けぬ純粋な状態のままにしておきたい。そんな強い意思が伝わってくる。

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光浦靖子の作品群

 他にも会場では、碓井ゆい、UMMMI.、大矢真梨子、荒神明香、小林エリカ、高田安規子・政子、矢内原美邦の作品に出合える。何気なく過ぎていく日々のなかから掬い上げたものだけが、信じるに足るし美しいのだと再確認させられる展示だ。