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「まだ生きていられるのだ」

 けれども、私が数年にわたって温めていた復讐計画は、結果的にとりやめになりました。実家から逃げ出したことで、考え方がこれまでとはまったく変わったためです。自分にとって安全な場所を確保した私は、誰からも殴られることなく、怒号を浴びせられることもなく、少しずつではあるものの、穏やかな生活を送れるようになりました。

 以前の私は、あの家で起こることが、この世界のすべてだと思っていました。逃げ道もなく、このまま一生、普通の人と同じような生活を送るなんてできないのだと諦め、人生に絶望していました。しかし、いざ逃げ出してみれば、自分が生きていた世界がいかに小さかったか、外の世界がこんなに広いものだったのかと、思い知ることができたのです。

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「誰かに復讐するために死のうだなんて、一体それが何になるのだろう」

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 初めてそう思えたとき、私は「死ななくて済んだのだ、まだ生きていられるのだ」という安堵の気持ちから、Tシャツの長袖がびしょ濡れになるまで、堰を切ったように泣き続けました。

逃げ出せない環境はない

 それから5、6年が経って、私の心身は少しずつ快方に向かっています。心療内科に通いながらではあるものの、昔よりもよく眠れるようになり、人並みに日々に幸福を感じてもいます。今、当時を振り返って「あのとき、もしも死んでしまっていたら」と考えると、怖くてたまりません。

 誰かへの復讐のために死んでしまった人たちのことを、否定したいわけではありません。彼ら、彼女らが苦しんだ末の決断の是非を、ここで身勝手に問うこともしません。ただ、もしも逃げ道が見つかっていれば、未来が少し変わったかもしれないことを思うと、彼らが命を落としてしまったのは、本当に悲しいことです。

 もしも今、辛い環境に置かれているのなら、自分が安全を確保できる場所に身を移すことを考えませんか。死ぬことを考えてしまうくらいなら、一度、すべてを捨ててもいいから逃げ出してみませんか。守るべきものは多いかと思いますが、それらはすべて命あっての物種です。家庭も仕事も学校も、あなたが大人でも未成年でも、逃げ出せない環境などありません。たまたま今いる場所が悪かっただけで、場所さえ変えれば生きていくことができます。

 あなたが今、生きていることに心から敬意を表します。