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これは山の化石かもしれない
青木による構築物の数々は、主に鉄でできている。かなりの量を使っているので全体の重量は相当なものになるのだろうけれど、見た目はずいぶん軽やかだ。大小の輪っか状に加工された無数の鉄が、自在に組み合わされてかたちを成しているからだろう。
こうして見ると鉄は鉄のように思えず、これは硬さや重みを持たない特別な物質なのではという気がしてくる。青木の作品によって、物質の特性やら重力やら、この空間だけ物理的なルールが塗り替えられてしまったかのよう。
表面を石膏で覆ったり、そこかしこに生卵を結わえた作品もあるけれど、基本的に青木の山は鉄によって骨組みだけが示されている。ああこれは、地中に残っていた骨の化石から、全体の骨格を復元して組み上げた恐竜やマンモスの像と同じく、山の化石なのかなとも思う。そこにあるのは構造のみだから、肉付けをして像を完成させるのは観る人の役目だ。
ぜひ展示空間で、山のようなものの化石と対面して、自分なりの像を完成させてみては。