東京が56年ぶりの五輪を迎える2020年、政治や経済、国際関係はどう変化しているのか。スポーツや芸能、メディアや医療の世界には果たしてどんな新潮流が――。各界の慧眼が見抜いた衝撃の「近未来予想図」。
離党者が相次ぎ、弱体化する民進党は東京五輪まで存続できるのか。東京大学教授の牧原出氏が分析する。
(出典:文藝春秋2016年7月号)
民進党はどのように「ダメ」なのか
2020年、日本は現在以上に課題山積であろう。安倍政権あるいはその後継の自公政権でさえ、そろそろ新規の政策のアイディアが枯渇し、目前の課題にも十分対処できず、いわばエネルギー切れとなっている可能性もある。
だが野党は? と思うと、実に心許ない。政権交代はまだまだ先の話であろう。
民進党はダメだ、おそらくは別物になっている――今のこの党を見ていると、それが2020年の日本の野党の姿だと思わざるを得ない。このまま何ら新機軸を打ち出せず、有力議員の離党が相次ぎ、自民党の圧倒的多数議席が続いているかもしれない。あるいは、党名変更などいろいろな新しい試みを提案しているが、どれも国民の心に届かず、苦闘しているのかもしれない。
つまり、一口にダメだと言っても、よいダメもあれば、悪いダメもある。統治能力を十分示せる段階では到底ないという意味では、普通の「ダメ」である。何をしてよいか分からないままだとすれば、最低の「ダメ」である。だが、準備を重ねつつあるものの、まだその段階に達していないという状況であれば、いくらかでも党の将来を期待することができる。将来がありそうだが、「まだダメ」でいられるかどうかが、2020年の民進党あるいはその後身の党に問われている。
「改革」という夢物語を捨てろ
2016年3月に、維新の党の関東系議員と民主党が合流して発足した民進党であるが、その理念、政策などが全くと言っていいほど練り上げられていない。得体の知れない政党に、支持も集まらないのである。
振り返れば、地方分権改革や省庁再編、情報公開など、冷戦終結後の諸外国で進んだ改革を自民党以上に本格化させることを掲げたのが民主党であった。
だが、2010年代の現在、そうした改革そのものがもはや行き詰まりを見せている。1990年代に唱えられた政治改革、地方分権改革、省庁再編、規制緩和など、今となっては新しく構想するための材料はどこにもない。道州制に至っては論外である。しかも、諸外国とりわけ先進諸国を見渡せば、どの国も内政の喫緊の課題にとらわれている。世界的な改革の潮流などどこにもないのである。
冷戦終結後の世界的な制度改革の趨勢は、もはや消滅した。民主党は、そうした“改革バブル”とともに党勢拡大を遂げたといえる。このバブルは、民主党政権の「脱官僚依存」「政治主導」などほとんどの改革構想が頓挫したことで雲散霧消した。政権を追われた民主党が民進党となり、今、改革を掲げたところで、うさんくさく見えてしまうのは致し方あるまい。
民進党に必要な姿勢は、「改革」という夢物語を捨てることである。そもそも改革を行ったところで、その効果が表れるとしても数年から10年程度先である。政府の非を突き、改革を唱え、個々の議員は街頭演説でそれを説くという民主党のビジネス・スタイルを踏襲するだけではこれからの民進党に将来はないのである。