「ニトリ」の似鳥会長がいた理由
さらに、同じ店に居合わせた安倍晋三首相の会食の相手が、ニトリホールディングスの似鳥昭雄会長だったというのも重要なポイント。二階氏は翌19日の都内での講演で「総理は一般の人と来ていた」と発言していますが、実はその似鳥氏とは昵懇なのです。昨夏に北海道であった二階派の研修会には似鳥氏を講師に招き、その後、ニトリがスポンサーの花火大会を観に行ったほどの間柄。出席者の中で二階氏だけが首相日程を事前に知りえる立場であると同時に、その日、首相側のホストであった似鳥氏と密に連絡を取り合えるのです。
小泉氏は安倍氏と原発政策を巡り、意見が対立しています。15年3月に総理経験者の会で“決裂”して以来、昨年9月に故・加藤紘一氏の葬儀で数分間、脱原発を迫った以外は「安倍さんの近くから誘いはあるが断っている」と周囲に語っていました。小池氏とも、今回の会合の数日前に開いた脱原発運動の記者会見で「小池さんとは一度も会っていない」「選挙応援はしない」と大見得を切ったばかりですから、積極的に会おうと思ってはいない。無論、小池氏は都知事選に出る前から安倍氏との関係は冷え切っています。だから、安倍、小池、小泉という会いたがらない3人を会わせた仕掛人が存在する。その役どころを演じられる出席者は二階氏しか考えられません。同じお店の個室を行き来しながら、一晩で複数の用事をこなすのも、二階氏ならではのやり方と聞きます。このタイミングこそ、「都民ファーストとは対決するけど、小池氏とはケンカしない」という党執行部のスタンスを都議選前にアピールできるラストチャンスだと思ったのでしょう。
さらに、似鳥氏は小泉氏が最も恩義を感じている経済人の一人でもあります。小泉氏は原発ゼロ運動を続ける傍ら、東日本大震災時に「トモダチ作戦」として救援活動に当たった米兵の中で健康被害に苦しんでいる人々の経済的支援をしています。昨年7月に基金を立ち上げ、今年3月までの募金活動で約3億円の義援金が集まったのですが、そのうち1億円をポンと出してくれたのが似鳥氏。2月に小泉氏の講演会を聞いて活動を知り、その翌日に1億円を口座に振り込んできたそうです。この日挨拶に来た安倍氏と同席していたのが“同志”の似鳥氏だったということで、小泉氏の心のハードルも下がったと思います。
「小泉の精神安定剤」中川秀直の“意味深な不在”
最後に蛇足なんですが、気になる点がありました。それは中川秀直氏がいないこと。中川氏は小泉政権時代に国対委員長を務め、その前から塩川正十郎氏と並ぶ「小泉の精神安定剤」と呼ばれた人物。現在も月に2、3回ある小泉氏の地方講演には必ずと言っていいほど中川氏が付いてきて、同じ飛行機や新幹線に乗り、会場ではカバン持ちと一緒に客席で小泉節に聞き入っています。その出張の帰りには、小泉氏が中川氏を労って一杯ひっかけるのもお決まりです。
実は、小泉氏が4月1日に中川氏の地元である東広島市で講演を行った際、客席には中川氏と息子で現職代議士の俊直氏が並んで座っていました。二人が登壇する場面は主催者の強い意向で作られなかったのですが、小泉氏は講演中、中川親子の存在を聴衆にアピールしていました。だから、今回の「同窓会」に幹事長だった武部勤氏が出席しているのに、同じ党三役だった中川氏に声がかからないはずがない。会合の直前には俊直氏の政務官辞任が発表されただけに、息子がスキャンダルの渦中にある中川氏の不在がとても意味深に感じられました。(談)