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【日本ハム】大型連敗で考えた、どう負けると比較的つらくないか?

文春野球コラム ペナントレース2017

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負け方についてじっくりと考えてみた

 20日のオリックス戦(東京ドーム)、21、22、23日の西武戦(メットライフ)と週末にかけてファイターズは首都圏シリーズを戦った。結果は4対8、0対9、1対9、3対12だ。泥沼の8連敗継続中(24日現在)である。東京ドームで金子千尋にひねられた日に、「日本ハム 東急時代以来68年ぶり不名誉記録 4月2度目の5連敗」(スポニチ)の記事が出た。4月までに5連敗以上が二度もあるのは1949年、東急フライヤーズ時代以来のことらしい。東映フライヤーズではなく、その前の「東急フライヤーズ」だ。さすがの僕も生まれる前だ。

 つまり、今シーズンの「逆ロケットスタート」は歴史的な出来事なのだ。僕が生まれてから今日まで一度も見たことないくらい弱いのだ。東京時代(特に80年代)も大概弱かったと思うけど、これよりはマシだったらしい。この1週間の変化を言うと「接戦の競り負け」だったものが「ワンサイドの大敗」になったことだ。打線が(近藤健介以外)湿ってるだけじゃなく、投手陣が踏ん張れなくなった。特にエースローテで回している有原航平の4敗が痛い。一体、どこまで低迷すれば気がすむのだろう。これでも昨シーズンのチャンピオンチームかと情けなくなる。

 というのが表向きの話だ。

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 わりと楽しんでるよ、毎日野球のある生活。今週は球場で負け方についてじっくり考える時間を持った。サンプルにしたいのは21日の西武4回戦だ。皆さん、どんな負け方がガックリ来ますか? まぁ、色んな答えが考えられますね。「サヨナラ負け」「初回に満塁ホームラン被弾」「エラーが決勝点」etc. 21日の試合はその一つの回答になり得たんじゃないかと思う。西武・菊池雄星に1安打完封だ。それがまた1回表、先頭打者の西川遥輝が1、2塁間を破ってそれっきり、二度とその日ファイターズの攻撃に「H」の電光表示は灯らなかった。

 これはものすごく盛り上がりにくいのだ。最初にヒットが出て2番中島卓也が送って、そこまでだなぁ、形になったのは。以降、何にも起こらない。ウンともスンとも言わない。まぁ、実質ノーヒットノーランのようなものだ。といってノーヒットノーランでもないのだ。最初にヒットが出てるから「大記録達成か!?」「何としても阻止するぞ」と盛り上がることもない。同じ1安打でも9回に飛び出してたら、球場は異様な興奮に包まれただろう。

「1安打」ではなく「ワンアンダー」

 実は前日(20日)のオリックス戦も途中までよく似た構造の試合だった。1回裏、近藤健介がタイムリーを放って以降、何も起こらなくなった。僕は仕事をかたづけてから遅れて球場入りしたので、一方的にオリックスが打ってるのだけを見た。翌日との違いは初回のヒットが適時打だったことと、金子千尋が交代してくれたことだ。リリーフの海田智行が出てきてようやく近藤の2本目のタイムリー、レアードの2ランが炸裂する。が、金子が降板するまでは1安打だった。心のなかで「むーーーん」という音がしていたのだ。

 連日、初回1安打という試合に接して、「1安打」というと聞こえが悪いから「ワンアンダー」と呼んではどうかと考えてみた。ゴルフみたいでカッコいい。すると無安打は「パー」ということになるか。「パー」という腰くだけた語感は確かに無安打にふさわしい気がする。

 しかし、1安打でも「ワンアンダー」でもいいが、人にとって幸せとは何だろう。読者は最初に1安打出るのと、途中(4回くらい?)に出るのと、9回いよいよ押し詰まってから出るのとどれがいいですか? ことは「好きなおかずを最初に食べるか最後まで取っておくか」という話に似ている。どんなに頑張っても1安打しか出ない場合、その貴重な1安打をどこに配置するか。

 ちょっと写真を見てほしいが、21日、試合前の僕はこんなに嬉しそうだった。

©えのきどいちろう

 隣りにいらっしゃるのはGAORAのレポーター等を務めるフリーアナの西村志野さんだ。最初、名刺交換したときは気づかなかったが、話しているうち「あ、名護キャンプで選手の似顔絵描いてた人ですか!」とわかる。GAORAの名護キャンプ中継では毎日、スケッチブックに似顔絵を描き、ヒチョリにツッコミを入れられ、結城哲郎アナにやさしくフォローされていた。

 人にとって幸せとは何だろう。読者は試合前にかわいこちゃんレポーター(?)に逢うのと、途中(4回くらい?)に逢うのと、9回いよいよ押し詰まった頃に逢うのとどれがいいですか? どんなに頑張っても1かわいこちゃんしか出ない場合、その貴重な1かわいこちゃんをどこに配置するか。

 残念なことに選択の余地はなかった。西武4回戦、1かわいこちゃん→1安打の流れは「17時45分から18時15分」のたった30分間に集約していた。その後は1回裏、秋山翔吾の先頭打者ホームランを皮切りにボッコボコにされ、0対9の敗戦だ。武田久が敗戦処理で登板し(打たれながらも)2イニング仕事をした姿かなぁ、唯一胸が熱くなったのは。帰りの電車では久が奮闘する姿だけを何度も思い返していた。

武田久 ©文藝春秋

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※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。

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