「おい、小池!」とばかりに「決められる政治」を潰された都知事
各紙を読むと、今回のセレモニーの大きな要因には「都議選」がある。
《7月の都議選は小池氏が率いる「都民ファーストの会」と自民党都連が全面対決する構図。小池氏の手柄になる事態を避けたかった政権にとって、3知事の要望を受けた官邸が調整役を果たして決着、は思惑通りだったといえる。》(スポーツ報知・5月12日)
実は、小池氏としてはこの件は「決められる政治」をアピールする場にして、都議選への絶好のパフォーマンスにする予定であった。
《11日の小池氏と首相との会談は5月の大型連休前に決まっていたとされ、「負担表明に向け準備を進めていた」(知事側近)。小池氏にとって都議選前の見せ場になるはずだった。》(産経新聞・5月12日)
ところが、その2日前に知事3人が動いたことで小池サイドの思惑はひっくり返されたのである。小池サイドは「受け身」になってしまった。
官邸サイドからすれば、都議選での都議会自民党の劣勢ムードを食い止めるために、「決められない小池」「おい、小池!」のアピールをしたとみえる。
要は官邸側も小池側も"都議選への好印象づくり"を仕掛けていたのだ。そのために五輪は格好のネタだった。どちらも狡猾だが今回は官邸のほうが上回ったという話。
思い出したい、安倍マリオ問題
実は、「安倍首相(官邸)対小池都知事」のセレモニー合戦は今回が初めてではない。昨年夏にも大きな仕掛けがあった。
リオ五輪の閉会式に出現したあの「安倍マリオ」である。安倍晋三首相がマリオに扮して登場した。
私が想像したいのはあの日、あの現場である。
「安倍マリオ」登場の瞬間、競技場は盛り上がっていたようだが、あの場所で1人だけ悔しがってるに違いない人物がいた。小池百合子である。
小池氏は新・東京都知事としてキンキラキンの着物で意気揚々と乗り込んでいった。しかし最後は安倍マリオに話題を持っていかれた。目立つ気マンマンだった都知事がイラッとならないわけがない。当初は私の想像だったが、「安倍マリオの発案は森喜朗(東京五輪組織委員会会長)」と報じられてからこの見立ては俄然リアルになった。
マリオ役を首相に決めたのはいつなのか? という点に絞って当時の新聞記事を読みなおすと「小池氏が都知事選で有利」と言われはじめた時期も浮上するのである(詳しくは拙著『芸人式新聞の読み方』を読んでください)。
「小池百合子がリオ五輪の閉会式で目立つくらいなら安倍ちゃんを出そう」という思惑はなかったか?小池嫌いと言われる森喜朗が口を出したならそこまで考えなければならないのだ。
その小池氏も、昨年の都知事選出馬では自らの仕掛けが見事にハマった。
昨年6月29日、都議会自民党が前総務事務次官の桜井俊氏に出馬要請をおこなった日に、小池氏は立候補の意向を表明した。桜井氏へプレッシャーをかける意味もあったのだろう。この「先出しじゃんけん」は成功し、桜井氏は出馬固辞。
小池氏が都知事に当選後、安倍首相は小池氏に「一本とられた」とコメントした。しかしそのあと安倍マリオを仕掛けられた小池氏の胸中もまた「一本とられた」ではなかったか?
そして今回の「都外仮設設備費」問題である。またしても両者のセレモニー合戦がおこなわれたのだ。
それにしても、官邸にも小池氏にも「五輪」は格好のネタであることがわかる。
五輪の政治利用、すごい。