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朝日と読売の論調がまさかの一致!? 「珍現象」を引き起こした小池都政

朝日も読売も、何気に意地悪だった

2017/04/07

おもしろすぎるニュースには気をつけろ

 先週いちばん興味深く読んだのがこの記事。もしかして「小池独走」の潮目が変わってきている? とも感じたからだ。

「都議選、ぼやける『豊洲』 小池氏『旗印にせぬ』自民『争う』 都議会閉会」(朝日新聞・3月31日)

《小池氏は24日、豊洲市場を巡る問題を「旗印に掲げない」とし、「争点になる」としてきた姿勢を後退させた。(略)築地市場の土壌汚染などの問題が新たに浮上し、都幹部は「いろいろな論点が出た。単純な争点化が難しいと考えたのだろう」とみる。》

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小池劇場の支配人 ©getty

 最大会派だが「野党化」した都議会自民党に対して都知事が守勢。これ、就任以降初めてのケースではないか?

 私は小池都知事に関しては「半信半疑」で見たほうがいいと思っている。

 半分信じる点は、「豊洲移転の経緯」をあらためて掘り起こしてくれたこと。

 半分疑う点は、移転問題を「7月の都議選の争点にする」と言ったこと。つまり豊洲の選挙利用のにおいがプンプンしたこと。

 7月までネタをつなぐために百条委員会の証人喚問などで政治ショーをやっているようにみえた。どう考えても「おもしろすぎる」のです。

「わかりやすく、おもしろく、刺激的な」ニュース(ポスト真実)に対して気を付けなければいけないのなら、「わかりやすく、おもしろく、刺激的な」政治家に対しても注意しなければいけない。小池氏のショーを楽しむならそれぐらいの慎重さも必要。

朝日と読売、小池都知事への疑問が一致

 そんなことを考えていたら、「小池氏と豊洲」について珍しいものを見つけた。石原慎太郎氏の証人喚問がおこなわれた際の、「朝日」と「読売」の記事のなかの一文だ。

 論調が異なり、リベラルと保守の代表のような両紙だが、なんと小池都知事への「疑問」が一致していたのである。

各紙を読み比べると珍現象が浮かび上がることもある

 まず「朝日」。

《なぜ過去の責任追及と食の安全・安心の問題が結びつくのか説明していない。》(3月20日)

 そして「読売」。

《過去の責任追及が、豊洲市場の「安全・安心」問題にどう結びつくのかは判然としない。》(3月21日)

 見事な一致。

 パッと読むとややこしいけど、よく考えてみると指摘の内容は理解できる。

 百条委員会で過去の責任追及(石原元都知事らを引っ張り出して聞き出す)をするのは重要なことだ。興味がある。しかし、いま現実にある豊洲新市場が安心・安全に使えるのかという移転判断とはまた別の話。「朝日」と「読売」はそこを指摘している。

石原元都知事 ©getty